Outside

Something is better than nothing.

芸術

王朝の歴史

歴史の指し示すものについて、あまり世界認識としてのズレはないのだろうと思っていたのだが、学問的にはどうやら異なっているようで、最近は余裕があるときの寝る前に東京大学の過去の講義動画を聞いているのだが、そのまま寝落ちしてしまうこともあるので…

義とは?

ヴィヨンの妻(新潮文庫) 作者:太宰 治 新潮社 Amazon 高校生から大学生の頃だったと思うが、太宰治の新潮文庫から出ている文庫本を順番に読んでいたことがあり、『ヴィヨンの妻(新潮文庫)』まで辿り着いて、そこに収録されている「父」を読んだ。 冒頭は…

後ろの曲がり角——あるいは「はてなしはてな?」の郷愁

www.youtube.com テレビ東京で平日の朝に放送されている『シナぷしゅ』は、特徴的なキャラクターが前面に出ているものの、その中にウタぷしゅというコーナーがあって、そちらが私としては好みであるのだけれども、そこに志人の「はてなしはてな?」という楽…

要すれば言葉、というより他はなく

金井美恵子の稀有な批評であり言葉そのものの記憶でもある『〈3.11〉はどう語られたか: 目白雑録 小さいもの、大きいこと (914) (平凡社ライブラリー か 38-2)」』を読んでいると、こんな小さなことでさえもここまで言葉を語ることができるのだという、金井…

碑銘の言葉

横光利一の小説に「夜の靴」というものがあって、たしか私の記憶が間違いでなければ『旅愁』後、つまり戦後の作品であったような気がするのだが、もうすでに筋書きはほとんど覚えていないのだが、その中に「篆刻の美は死の海に泛[うか]んだ生の美の象徴では…

他人の恋愛、あるいは『四百センチ毎秒の恋』について

人々はある時期を過ぎると、自分の恋愛がひと段落したのか、それとも自分の恋愛がどうあっても成就し得ないものだと理解したからか、なのか分からないのだが、他人の恋愛に熱中し始める。ただしこれはすべての、という言葉を冠するには、あまりにも範囲が広…

ペソアを読む喜び

秋が訪れるたびに、私の中にあるサウダーデが訪れるのだが、それはもっぱらフェルナンド・ペソアに起因するもので、この季節において私はペソアを思い出す。 ペソアの作り出した宇宙は、異名という、一種の異様さをもって私たちの前に現前することになるのだ…

真実の真実らしさ

人々はもはや真実の真実らしさといったものについて無頓着になってしまったのだ、といった雑駁なことを記述してみてから、どことなく私の中で、それについての諦めのようなものを感じている。それは例えばこれから書こうとしている、文学を初めとした物事に…

作ること?

有給休暇なるものを取得した一日、というのは、仕事というものがのっぴきならないものとして存在する平日の中で、すっぽりと空いた穴のような、あるいは航空中に遭遇するエアポケットのような、そういった代物である。で、金曜日の今日、どこか仕事のリズム…

映画を観なかった日々について

一年間という時間を考えたときに、そこに映画が含まれる時間というのはごく僅かなのだろうか、ということを考える。例えば1本120分の映画を百本観たとして、それでも12,000分という時間にしかならない。この時間はどういう時間かと言えば、おおよそ8日間とい…

編集の効果

フィンチャーの『ファイト・クラブ』の中で、ブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンは完成されたフィルムの一コマ、意図されざる一瞬の中に、男性器を挿入することで資本主義社会における反抗を試みるわけなのだが、単純化して言えば、これはあらかじめ…

水銀の記憶

新装版 苦海浄土 (講談社文庫) 作者: 石牟礼道子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2004/07/15 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 175回 この商品を含むブログ (65件) を見る 喚起 池澤夏樹個人編集の河出書房新社から出ている世界文学全集の中に、石牟礼…

脇道に逸れた先の共同体

日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書) 作者: 三谷太一郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/03/23 メディア: 新書 この商品を含むブログ (10件) を見る 非常にどうでもいい類推をしてみたくなるときがあるのだが、例えばそれは読書を…

同化と異物

知らなかった歴史 少し思うところがあり、長いスパンを設けてではあるのだが、戦時中の朝鮮半島近辺の歴史を学ぼうかと考えているのだけれども、その手始めに後藤明生の出自(「引揚げ文学」の射程から)について気になった。これについては、現在、東條慎生…

視野を広げる直截な方法

視野の狭さを改善するにはもちろん視野を広くするより他はないのだけれども、実際そのように取り計らおうとしたところで、一朝一夕にどうにかなるものではない。しかしながら、実は非常に簡易にそれができるということをある本を読んでいると分かったのだが…

ジャコメッティの複数

たぶんリートフェルト展以来ということになるのだろう、美術展に足を運ぶことになった次第であるのだが、行ったものと言えばジャコメッティ展で、元より絵画については何も分からない私ではあるのだけれども、かといって彫刻が分かるのかと言われれば、無論…

見る前に跳べ

前書き オーデンの「見る前に跳べ」について、以前から知っていたというわけではなく、なんとなくその詩のタイトルだけを例えば大江健三郎の作品名から知っていたりする程度で、一体誰のものなのか、そもそも詩だということすら知らなかったのだが、あるとき…

三、さん、スリー

別に実証的な研究をしたいわけではないし、するつもりでもないのだが、この3という数字は、人間がとりあえず頭に浮かべてしまう数字であるらしく、たびたび使用されている。小説を読んでいると、よく過去の出来事を回想するときに想起されやすいのが「三年前…

前進運動

前へ前へ進もうと考えることそれ自体にたぶん意味はなく、結果的に表出されたものにこそ意味があるのだろうと思いつつ、しかしながらそれを作り出すためにはその気持ちが必要ではある、と考えるわけなのだが、例えば小説を書くときに、一体どこまで続けられ…

クリエイターの手

Netflixで『アート・オブ・デザイン』というドキュメンタリーを最近観ているのだけれども、これがけっこう面白くていろいろなことを考えてしまう。第四回まで観ていて、今のところどのクリエイターも手を使って物を作り出している。 デジタルとの融合はもち…

小説のエネルギー

久々に小説を書くようになって、その書きっぷりがまた単に書くことが可能という状態ではなく、思考自体が小説を書くものに変貌している、ということに驚いている。具体的には記述の果てにぐちゃぐちゃした、時に矛盾するセンテンスを書けてしまっているとい…

漢字の配置

今もって自分の書くものの中で、漢字をどう配置していくのか、ということについてよく悩む。昔は「すごい」という言葉についてはひらがなで書いて、「凄い」と漢字では書かなかった。けれども昨年くらいから漢字で書くようになって、この導入はかなり慎重に…

クリエイティブな物語の協奏曲 ―ねじれ双角錐群『望郷』について―

nejiresoukakusuigun.tumblr.com 紹介 ねじれ双角錐群の『望郷』を読む。第二十三回の文学フリマにて頒布されたもので、私はネットで購入した。今現在(2017年1月25日)は品切れ中の模様。 収録作は下記の通り。 石井僚一「物語のない部屋」小林貫「新しい動…

毛利小五郎という男

名探偵コナン(1) (少年サンデーコミックス) 作者: 青山剛昌 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2012/09/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 名探偵コナンについて 『名探偵コナン』はHuluで視聴することができるのだが、そういったアクセス…

考える軌跡

保坂和志の小説ではないエッセイをメインとした本を読むときに、ポーンとボールを無造作に投げたかのような言葉に出会うことが多々あり、それは良い面と悪い面とがあることは重々承知であるし、「保坂和志」的なものについての検討というものはしなければな…

才能にまつわる病

『SNSポリス』をどこかの記事で読んで爆笑してからというもの、「かっぴー」という名前を記憶していて、『左ききのエレン』という作品を描いていることも知っていた。 SNSポリスのSNS入門 作者: かっぴー 出版社/メーカー: ダイヤモンド社 発売日: 2016/07/2…

怪しい者たち

無窮の歴史 中世という言葉を聞いたときに、直接見たわけではないのだけれども『少女革命ウテナ』の「甦れ!無窮の歴史『中世』よ」だったか、この曲について知り合いの誰かが言っていた。 「中世を何だと思っているんだろう」 歌詞をカラオケでぼんやり眺め…

からっぽのあり方

世界が終わる夜について チャットモンチーの「世界が終わる夜に」という曲がけっこう好きなんだけれども、今まで歌詞をちゃんと読んだことはなかった。 今日その歌詞を読んだのだが、なぜかといえば、ヒラリーが勝つだろうと思っていた米大統領選がトランプ…

リートフェルトの椅子

線の力強さ どういうタイトルのついたものだったか忘れてしまったし、作家の名前すら忘れてしまったのだが、東京に来たばかりの頃に非常に抽象的な絵画を見に行ったことがある。 たしかアボリジニにルーツを持つアーティストの、力強い線による抽象度が高い…

見ているようで、本当は見えていない

私の財布 ポール・スミスの財布を私は普段から使用している。この長財布との付き合いはもう5年となり、財布にこだわりを感じたことのなかった私としては大事に使用している気がする。あまりも傷もついておらず、というか傷がついたらかなり落ち込むくらいに…