Outside

Something is better than nothing.

『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年)

 井上雄彦の『THE FIRST SLAM DUNK』を観る。

 原作漫画における山王戦を再構成し、宮城リョータを視点として、湘北高校が山王工業と対戦する様を描いていくことになる。展開はバスケットボールの試合の合間に、宮城リョータを中心とした彼がバスケをする理由や三井との関係性、また部分的に山王工業のメンバーの試合直前の様子などが描かれる。

 あらすじを書くのが難しいのは、内面の描写を減らしているとともに、展開がバスケットボールの試合に相応しいスピーディな展開があるからだろう。そもそも原作の山王戦自体が一種の神話であり、我々は何度目かの山王戦を追体験しながら、同時に原作では描かれなかった宮城リョータの過去に深く踏み込んでいくことになる。それは彼の物語であると同時に、「諦めたらそこで試合終了ですよ」というあの有名な台詞のように、諦めざる人たちの戦う姿であった。

 何度追体験しても心躍る山王戦の展開は、新たに映画として物語られても同様のものだった。それに対し、こういうアプローチが可能なのか、というのは、単に技術的な映像の面白さだけでなく、語り口としての興味深さがあったし、それは原作者自らが監督を担ったがゆえのものなのだろうと思う。