『名探偵コナン 緋色の弾丸』を観る。
コナンは名古屋駅と芝浜駅(高輪ゲートウェイ駅に相当するものと思われる)とを結ぶ超電導リニアやWSGというオリンピックに相当するイベントのスポンサーが集まるパーティーに出席したりする。そこで鈴木園子の父親である鈴木財閥の会長史郎が一瞬の停電のうちに拉致される事件が起き、同様にスポンサー企業社長が誘拐されるという事件が立て続けに起こっていたことが判明する。その種の事件は15年前にも同様に発生していることを沖矢昴に聞かされる。そこで日本人の犯人が捕まっていることが判明する。事件を追うように沖矢こと赤井秀一に依頼されたコナンは、WSGのために超伝導リニアの完成披露にかこつけて次の事件が起こると睨み、リニアの体験乗車に鈴木園子の力を使って乗り込むことになる。一方、この事件にはMI6経由でメアリーと世良も参戦することになり、また宮本由美を紹介したい羽田秀吉もまた名古屋に集結していくことになる。乗車前の検査を受けるために訪れた病院で、MRIのクエンチによってガスが充満し、コナンたちは気を失ってしまう。そしてそこでWSG会長でかつてFBI長官も務めていたアラン・マッケンジーが誘拐されてしまう。リニア乗車は乗客不在のまま試運転が強行され、世良とコナンはリニアに乗り込むことになる。赤井は遠距離からどこかに向かって発砲する。世良とコナンは犯人として、広報担当の白鳩をあげ、アランを救う。アランが白鳩を誘導し、その結果として赤井が放った超遠距離狙撃が奏功し、白鳩の殺意を奪うことに成功する。実は白鳩には共犯者がおり、それはエンジニアの井上であった。タブレットにより遠隔でリニアを操作することができるため、リニアを暴走させる。そして井上はリニアに並走するようにして走っていた新幹線から降り、逃走する。しかしFBIのジョディとキャメルにより、羽田秀吉の巧みな采配もあって捕まるものの、制御不能となったリニアは急加速を行い、東京に突っ込んでいくことになる。世良とコナンは物理的にリニアを止めるために奮闘し、イベント用に用意されていた万国旗をパラシュートに見立てることで減速を図ろうとする。しかしリニアは結局のところ、スタジアムに突っ込んでしまうものの、奇跡的に世良とコナンは生還する。
随所で言われているだろうが、シャイニング・スコーピオンである。かつてスーパーファミコンのミニ四駆のゲームであった、あれである。そしてそれを知っていると、懐かしいようなむず痒いような、そんなことを思うのだった。トンネルの中で真空状態で超伝導リニアとして時速1,000キロメートルに達する弾丸のような列車に、なぜ速度に応じて色合いが変化する必要があるのか。トンネルの中で最大速度に達していたように思うのだが、そうだとすれば日の目を見ないではないか、と個人的には思うのだが(最大速度の赤色)、何かそのような必然性が機能としてあったのだろうか、と少し思った。シャイニング・スコーピオンはゲームの中で、なかなか速度差を実感しにくいスーパーファミコンというハード面というか当時の技術限界がある中で、プレイヤーが「速度」を実感するための視覚的な演出として極めて優れていたし、実際のところそれが本物のミニ四駆として売り出されたとき、確か色が変化しなかった記憶があって落胆すらしたのだった。だが、このリニアは。
いずれにしても、話が細切れになっており、キャラクターの乱立とキャラクター間の複雑な関係性(誰それは誰それの素性や正体を知っている/知らないといった)のため、キャラクターは関係性に応じて相互に物理的な距離を取らざるを得ず、結果としてリニアの存在は大きな背景となってしまっており、また赤井秀一の超遠隔狙撃が、その遠隔さのゆえにやや唐突な印象がある。当然、現実的にはあり得ない偶然性によってそれはもたらされるのだが、それをコナンによる赤井秀一や水無怜奈の「まさかここまでとは」と驚嘆せしめた狂言回しの采配によって成功させるのだが、その配置に至るまでがややこしすぎるのだった。
そしてこの驚異的な采配はチュウ吉こと秀吉も行うことになる。その采配の妙技は太閤に相応しいものなのだが、演出面での限界があろうと思われる。
演出と書いたが、この物理的な距離による制約をいくつかの奇抜な演出(推理描写)によって解決しようとした痕跡を感じるが、それがうまくいっているとは言い難い。