Outside

Something is better than nothing.

『マンク』(2020年)

 デヴィッド・フィンチャーの『マンク』を観る。Netflix映画。

 オーソン・ウェルズの監督デビュー作『市民ケーン』の脚本は、ハーマン・J・マンキーウィッツことマンクが書いたものだったが、それをゲイリー・オールドマンが演じ、酒に溺れながら、映画の題材ともなったチャールズ・ダンス演じるウィリアム・ランドルフ・ハーストやその寵愛を受けることとなったアマンダ・サイフレッド演じるマリオン・デイヴィスとの関係を描くことになる。

 1930年代のハリウッドの様子というものはまったく想像ができないこともあって、それはそれで面白い。撮影はモノクロで、これは当時の撮影環境を踏まえて、ということもあっての選択だったのかもしれないのだが、『市民ケーン』が比較的アクチュアルな作風だったことを思い返すと、カラーでも良かったのではないか、という気がしないでもない。モノクロの割にカットが当時のようにも思えなくて、見ていて時代感覚が分からなくなってくるのである。

 マンクはひたすら酒を飲んでいるのだが、ゲイリー・オールドマンが演じているためなのか、だんだんと『ウィンストン・チャーチル』(2017年)に見えてくる嫌いがあり、そのために映画そのものに集中することができなかったように思う。

市民ケーン』自体、十年前に観たきりなので筋もあまり覚えていないのだが、冒頭でケーンが死んだ際に各国がそれを報じる新聞の中に日本語で「新聞王ケーン死す」みたいなものが挿入されていた記憶があり、それが印象に残っている。