Outside

Something is better than nothing.

『マルタの鷹』(1941年)

 ジョン・ヒューストンの『マルタの鷹』を観る。

 ハンフリー・ボガート演じるサム・スペードは、相棒のジェロームコーワン演じるマイルズと一緒に私立探偵を営んでいた。そんなある日、メアリー・アスター演じるブリジッド・オショーネシー(登場時には偽名を名乗る)がやってくる。彼女はサーズビーという男と一緒に家出した妹を連れ戻して欲しい、と依頼する。その夜マイルズが一緒に彼女とともに妹と会う約束をしたホテルに行くが、マイルスは逆に殺されてしまう。スペードはそれをきっかけに警察に疑われ始めるが、肝心の依頼主が見当たらない。そうしているうちに、ピーター・ローレ演じるジョエル・カイロが事務所に訪れる。最初は穏やかな様子だったが、拳銃を取り出して家探しを始めようとする。彼をなんとか撃退することにしたが、事情がよく分からない。彼はは、ブリジットにどうにか再会し、カイロとも関係していることや何かを探していること、彼らの黒幕がいることを嗅ぎつける。やがて黒幕ことシドニー・グリーンストリート演じるガットマンが彼に接近してくる。彼らはマルタの鷹と呼ばれる宝物を探していることが分かる。それは金でできているが、歴史の荒波に揉まれる中で黒メッキを塗られ、その価値を悟られないように人々の間をたゆたっている。スペードはカマをかけて彼らとの交渉に臨むが、逆に返り討ちに遭ってしまう。彼らはどうやら香港から戻ってきたラ・パルマという船に向かったらしいが、スペードが向かったところ、火の手が上がっていた。事務所に戻ったところ、船長がやってきており、彼はマルタの鷹を手にすることになる。失踪したブリジットから助けを求める電話が来るが、向かったところ誰もいない。事務所に戻るところでブリジットが暗闇から現れ、再会したのも束の間、事務所の中にはガットマン一味が待っていた。そこで彼らは交渉し、マルタの鷹を渡す代わりに報酬を得ることや、マイルズ殺害の犯人を誰かに仕立て上げる必要があることが話し合われる。ガットマンは最終的に自分が息子同然に可愛がっていたエリシャ・クック・Jr演じるウィルマーを差し出すことに決める。翌朝になり、マルタの鷹が運ばれるとガットマンは金を見つけようとメッキを剥がすが、それは本物ではなく、あまりに高価なものだと悟らせてしまった結果、偽物にすり替わっていたことが判明する。口論するガットマンたちだったが、気を取り直して本物があると思われるイスタンブールに向かうのだった。残ったスペードはガットマンをあっさりと裏切って警察に通報し、マイルズを本当に殺したのがブリジットであることも突き止める。スペードを愛していると言う彼女を警察に突き出し、映画は終わるのだった。

 まったく無駄のない展開で、今観てもハラハラする映画であった。ハンフリー・ボガート演じるスペードが格好良く、また無意味なことを喋らないのが素敵である。途中、(彼女の宿泊先に訪れるシーンで)ブリジットに対し、いきなりキスするシーンがあったのだが、これは現代から見ると正直、意図が掴みづらかった。

 演出は練られているし、ここでは意図的に触れなかったがマイルズとの妻との関係性や警官たちの関係性等、無駄なくしっかりと描き出しており、2時間に満たない映画の中で濃密な時間を味わうことができる。

 ガットマンたちのキャラクターもよくよく考えると結構異様な造形性を与えられているのだが、たぶんこれを下手にやろうとするとかなりギャグに寄ってしまうのではないか、とも思う。一種の異能者たちの集まりといった感じもするし、漫画的でもある。しかしシリアスさをいささかも損なうことなく劇が進行していくので、観ているこちらは違和感を覚えない。

 ちょっと凄いものを観た、という感じがする。