Outside

Something is better than nothing.

『幌馬車』(1950年)

 ジョン・フォードの『幌馬車』を観る。

 ベン・ジョンソン演じるトラヴィスハリー・ケリー・ジュニア演じるサンデーは馬商人としてアメリカ各地を回っているが、ある町でモルモン教徒の一行と出会う。馬の売買にかこつけて、彼らにある話が持ちかけられる。それは馬を高値で買い、さらには追加料金を払うことで彼らの移住を手伝ってくれないか、というものだった。最初は悩んでいた彼らだったが、最終的には幌馬車隊に合流し、彼らの旅を助けることになるのだった。そこで旅芸人一座に出会い、ジョアン・ドルー演じるデンバーという美しい娘と出会う。強盗一味が夜の焚き火に惹きつけられて現れたり、怪我を治したりすると隊を乗っ取ったりする。

 基本的に一本道の話になるので、特段の脱線もなく、観ていてショッキングな部分などはない。ゆったりとした中で、ある目的地に行くためにさまざまな困難が待ち受けることになるのだが、別に人が大勢死ぬわけでもない。途中のインディアン(劇中ではそう呼称されるのでそのように書いているが、ネイティブ・アメリカン)襲撃は一波乱を感じさせるトラヴィスと馬の疾走があったが、一種の異文化交流のような形で終わっている(強盗一味の一人が部族の女に手を出して鞭打ちの刑に遭う、という後の禍根に繋がる場面こそあれ)。

 かなり地味な映画であることは事実なのだが、筆力がなければ成立しない題材であろう。途中途中で「水」がかなりキーアイテムとなってくる辺り、現代的に解釈すれば『マッドマックス 怒りのデス・ロード』であるかもしれない(戻ってはこないし、水の支配もないけど)。

 幌馬車の幌とその車輪の不確かさに毎度毎度「大丈夫かなあ」と思いながらも彼らの進行を楽しみにすることになる。いい映画だった。