Outside

Something is better than nothing.

『ザ・ベビーシッター』(2017年)

 マックGの『ザ・ベビーシッター』を観る。Netflix映画。

 ジュダ・ルイス演じるコール・ジョンソンはその慎重な性格が災いしてなのか、年齢の割には落ち着いているのか、それはともかくとして同級生たちに馬鹿にされ、虐められていた。サマラ・ウィーヴィング演じるビーは、コールのベビーシッターとして、倦怠期を迎えて疎遠になりがちなコールの両親が、関係の修復のために「ホテルセラピー」を行なっている間、面倒を見ることになっていた。ビーは年上の、いわば「ホット」な女性の魅力と、SFを始めとしたサブカルチャーの知識が豊富なことによる、少年的な感性によって、コールと気が合っていた。エミリー・アリン・リンド演じるコールの同級生の女の子であるメラニーは、コールに眠った後にビーが何をしているか確認するといいと告げる。そしてその夜、たしかにビーはコールが眠った後、見知らぬ男女を呼び込んでいた。当初はゲームに興じているだけだったが、突然ビーがゲームの中で男性をダガーで刺したことをきっかけに事態が急変する。ビーは謎めいた古書、魔術書を元に、血の儀式を行おうとしていたのだった。その矛先はコールにも向けられていた。彼は当然ながら警察に通報するも、仲間たちによっていとも簡単に壊滅させられてしまう。必死に逃げようとするものの、一度は彼らに捕まるが、彼は機転を利かせて彼らをどんどん撃退していく。ソーニャともいい感じになり、最後にはビーを撃退する(のだったが、実はビーは生きていた模様)。

 あまり肩肘張ることなく観ることのできる映画で、コンパクトにまとまっていて個人的にはかなりいいと思った。子供の頃に楽しんだ『ホームアローン』とか、そういう案配の映画であると思う。

 例えばラーメンズのコントの中で、「条例」というのがあって、その中で小学生男子に聞いた「お前の妄想とは何ですか?」ランキングがあり、そこに堂々一位で挙げられていたのが「エロい姉の存在」というものだった。つまるところ、ここでのコールも、まあ似たようなもので、ビーのキャラクターは実に小学生の男子的な欲望と、男性的な欲望とのマッチングの結果としてある。

 だから何というわけではないが、この欲望にだらしないキャラクター設定が、悪魔崇拝のカルトという、さらに一捻りされたキャラクターによって見事に裏切られ、てんやわんやの大騒動に至るのを見るにつれて、この映画は実に「健康」的だ、と思う。それは中盤の、いじめっ子に立ち向かえ的なメッセージ性からも明らかであろう。

 かくして映画は、ビーを離れてソーニャを選び、非常にまとまった一定の様式美すら見せられたような、そんな気にさえさせられる。個人的にはとてもいい作品だと思う。