Outside

Something is better than nothing.

『ランペイジ』(2018年)

ランペイジ 巨獣大乱闘(字幕版)
 

 ブラッド・ペイトンの『ランペイジ』を観る。

 エナジン社はゲノム編集による動物の巨大化を目論み、その軍事転用をもってして利益を上げようと、地球上ではなく宇宙ステーション内で実験を行なっていたが、実験中にネズミが巨大化し、宇宙ステーションは破壊されてしまう。だが地上にいるクレアとブレットの姉弟は、実験途中のカプセルを持ち出すように強固に言い含めていたため、研究員はなんとかカプセルを持ち出すのだが、しかし大気圏突入時にネズミによって破損した小窓が割れ、墜落してしまう。だが、そのカプセルは3つに分かれ、地上に降り注ぐことになる。さて、ドウェイン・ジョンソン演じるデイビス・オコイエは元特殊部隊の隊員で、今は引退し、ゴリラのジョージを始めとした動物たちを飼育している。皆から頼られているのだが、過去の経験から人間を信用することができなくなってしまい、動物にのみ心を開いている。そこにカプセルが墜落し、ジョージがその薬剤を浴びてしまう。結果として彼は凶暴化し、また巨大化していく。ナオミ・ハリス演じるケイト・コールドウェル博士はエナジン社の研究員であったが、自身の弟の治療のための研究が捻じ曲がっていくことに耐えきれずにエナジン社を辞め、また非倫理的な研究を破棄しようと研究資料を盗み出そうとしたところで捕まってしまい、懲役を喰らった過去があるが、今回の事態をすぐに見抜き、ジョージの治療に当たるために動き始める。だが、ジョージは為す術なく巨大化していき、また残り2つのカプセルによって狼とワニもまた巨大化する。狼を回収しようとしたエナジン社の傭兵たちは呆気なく返り討ちに遭ってしまい全滅。事態を重く見た政府はジェフリー・ディーン・モーガン演じるハーベイ・ラッセルを投入し、事態の沈静化を図ろうとする。ジョージに麻酔銃を打ち込み、飛行機で輸送を試みる。だが、エナジン社はゲノム編集によってコウモリの特性を持つようになった彼らに低周波の電波を本社から流し、彼らをシカゴ本社に誘い込もうとする。飛行機上で目が覚めたジョージは暴れ回り、飛行機は墜落する。デイビスはケイトやラッセルを助けるために奮闘し、なんとか墜落による死を免れることができたが、軍隊と行動を共にすることになり、彼らと方針が合わずに捕まえられそうになる。しかし、デイビスは機転を利かして逃走し、ケイトと二人でシカゴに向かう。巨大化したジョージと狼、ワニはそれぞれシカゴの街並みを破壊していき、エナジン社の電波塔を目指す。デイビスはケイトと共にエナジン社に忍び込み、凶暴化を止める薬を奪取しようとしたところで、クレアとブレットに捕まってしまう。屋上で迫り来る巨大化したジョージに対し、ケイトは機転を利かせ、薬の入ったカバンをクレアに渡して、ジョージはそのままクレアを食べることで凶暴化が収まるかと思えたが、破壊し尽くされたエナジン社のビルが彼らの破壊に耐えきれずに崩落する。彼らはヘリコプターに乗ってスライドしていくことでなんとか難を逃れるが、まだ狼とワニが暴れまわっていた。そこでデイビスとジョージは持ち前のコンビネーションで彼らを撃退していき、シカゴの街は救われるのだった。

 大味と言えば大味なのだが、それなりに楽しめるタイプの大味であって、そういった意味ではまさにハリウッド映画に相応しい映画と言えよう。例によってドウェイン・ジョンソンドウェイン・ジョンソンでしかない役回りであったかもしれないものの、それでもまた一つの楽しみと言えばそうなので気にならない。

 やや気になった点はエナジン社のビル倒壊シーンで、もちろんこれは同時多発テロにおけるワールドトレードセンターの倒壊とオーバーラップしていくような気がしてならなかった。アメリカにおける破壊表現から、かなり繊細な意味において娯楽によるビル破壊の姿というのは慎まれてきたような気がしていたのだが、ここに来て、ど真ん中の娯楽映画表現としてのビル崩落描写が出てきたのは、一つの時代の区切りと言えるのかもしれない。いや、もしかしたらもっと前にあったのかもしれないけれど。

 また、キャラクターの描写がやや中途半端で、例えば冒頭にケイトが遅刻癖があるような描かれ方をしていたのだけれども、途中からそういった要素はまったく省みられなくなった。これは少し演出上、疑問が残る。

 ゴリラのジョージとデイビスが手話で会話するところについては面白かったし、最後の下品なギャグも笑えるものだったので動物たちについてはそれぞれおどろおどろしさが出ていて、これは言うことはない。

 総じて言えばやはり大味。