Outside

Something is better than nothing.

『バード・ボックス』(2018年)

 スサンネ・ビアの『バード・ボックス』を観る。Netflix映画。

 サンドラ・ブロック演じるマロリーは幼い子どもふたりとともに川下りに挑む――目隠しをして。どうして彼女がこのような状態になったか。それは五年前に遡る。五年前、彼女は妹とともに病院を訪れていた。彼女は妊娠し、その年の9月に出産を控えていた。そのとき世界は謎めいた集団自殺症候群のようなものが流行っており、ロシアを始め、多くの国々で危機的な状況に陥っていた。アメリカもまた、同様の状態に陥っていく。病院内でマロリーは突発的に自殺を始める女性を見かける。妹と逃げるように病院を去った彼女だったが、街中で同様の状態になってしまい、パニック状態になっていた。妹も逃げる途中で何かを見てしまい、車が横転する。そこで女性に助けられ、一軒家に逃げ込もうとするが、助けようとした女性もまた何かを見てしまう。結局、ジョン・マルコヴィッチ演じるその女性の夫ダグラスの目の前で、女性は燃え盛る車の中に飛び込んでしまい、車は爆発する。そのためにピリピリとした状況だったが、一軒家の中で何人かの男女とともにマロリーは共同生活を送ることとなる。トレヴァンテ・ローズ演じるトムはマロリーを支えるようになる。また、途中で同じく妊婦の女性が逃げ込んでくる。どうやら視界を塞げば、死んでいった者たちのように狂気に陥らなくて済むようだったが、それでは状況が改善しない。監視カメラ越しに周囲を探ろうとしてみたものの、結果として犠牲者を出してしまった。また、スーパーに食糧調達に行った折には、自殺せずに行動する人間を見つけてしまう。ここでもまた被害者が出てしまう。ただ鳥が邪悪な何かの接近に気づくことが判明する。また、逃げ込んできた人を匿ったりしていると妊婦たちは揃って臨月を迎え、破水し、子どもたちを出産していく。同時に、逃げ込んだ人物は狂信者で、家の中の人たちを次々に狂気に陥れさせていく。マロリーは無事に子どもを産み、ふたりの子どもを抱えたまま、トムとともに逃げていく。五年が経ち、彼らは共同生活を営むようになるものの、子どもたちの名前はそれぞれボーイとガールで、またマロリーは自分のことを母親だとは明かさない。それはいつ何時、自分たちが狂気に陥るかが分からないからであった。しかし、生活物資は乏しく、また狂信者たちが時折車に乗って、周辺を荒らし回っている状況の中で、彼らの生活も追い詰められていく。ある日、トムは無線で安全な場所があることを聞く。マロリーは警戒するが、それは川下まで来なければならない場所だった。悩む彼らが調達に出かけたところ、狂信者が襲撃し、トムが死んでしまう。安全が損なわれたマロリーと子どもたちは決死の覚悟で、川を下っていくのだった。しかし、目隠しをしたままで川下りすることの苦難は凄まじく、途中で狂信者が襲い、また数々の邪悪な誘惑がマロリーを、そして子どもたちを惑わす。しかし、最後には彼らはその場所に辿り着いたのだった――盲学校という場所に。

 最終的にその邪悪な存在については明確に描かれないものの、こういったものについては別段その正体を期待するわけでもない。例えば『ハプニング』の発展的な解消法のようなものに思えてしまうわけだが、しかしながら出来映えはとんでもなくよかった。サンドラ・ブロックは冷笑的な母親を演じていて、これが実に様になっている。演じたマロリーは芸術家だったことが冒頭明かされるが、特段何かに繋がるわけでもなく、ある意味で芸術に心を捧げているといったキャラクター造形にしか絡んでいないのかもしれない。これはこれでステレオタイプ的なのでは、と思った。

 辿り着いた先が本当に安全なままなのか、ということについては、狂信者(と勝手に呼んでいるけれども、実際の名称はどうだったか不明)の存在によって、少し疑問符がつくのだが、辿り着いたときの緊張感の抜け方は自分でも驚くくらいにほっとしていた。川下りのシーンはやはり息苦しく、それは目隠しをした視野を何度も見せることで閉塞感を焚きつけていく。

 かなり見応えがあった。