Outside

Something is better than nothing.

『Dads 父になること』(2020年)

 ブライス・ダラス・ハワードの『Dads 父になること』を観る。AppleTV+映画。

 さまざまな有名人や一般人(日本人も出演している)が、「父になること」を語っていくドキュメンタリーになる。現代において父親の役割は千差万別であり、以前のように「父は仕事、母は育児」といった一面的な役割ではなく、「主体的に育児に関わること」をベースにして映画は作られている。内容自体は貧富の差も歴然とある中で、例えば息子に重い心臓の病気があり、しかし仕事を辞めるわけにもいかない父親の、それでも前に進もうとしているところなどが感動的であった。

 いわゆるハリウッド・セレブとでも言えそうな人たちが延々と「父親とは」といったテーマについて語っているのが少し鼻につくところがあるのだが、これは監督がブライス・ダラス・ハワードだからだろうか。彼女の役者としての存在ではなく、祖父・父親ともに役者であったという来歴が、この出演になるのだろうか。とりわけウィル・スミスの存在が個人的には微妙で、最後も何が言いたいのかよく分からなかったし、そもそも言っていることに説得力をあまり感じさせない。

 父親たちが、自分たちの父親たちについて語るところは感動的であるし、この反対の母親たちについても同様のドキュメンタリーがあればそれなりに感動することは確かであるのだが、こういった明るい面を謳われると、父親がいない人はどうするのか、あるいは父親になれない人はどうなのか、といった疑問が頭を過る。

 もちろん、こういった人々についてはこの映画のマーケティング上の対象ではないことは確かなのだろうが、少し不安を覚えるのは確かなのであった。