Outside

Something is better than nothing.

『スイス・アーミー・マン』(2016年)

 ダニエル・シャイナーとダニエル・クワンの『スイス・アーミー・マン』を観る。

 無人島に漂着したポール・ダノ演じるハンク・トンプソンは絶望のあまり首吊り自殺を試みようと思っていたのだが、そこへダニエル・ラドクリフ演じるメニーが流れ着く。ただしメニーは生きてはおらず、死んでいた。ガスによるおならで動く彼を訝っていたが、彼が海を渡りだそうとするところで、ハンクはメニーに乗って無人島を脱出する。そのまま持ちにたどり着いた彼は、洞窟で雨宿りをした。メニーの口に水が入り込み、胸のあたりを押し込むと飲料水を出すようになる。また、ポルノ雑誌を見せるとメニーは勃起し、なおかつその一物が方位磁石のようにある一定の方角を指し示すに及ぶ。また、英語を喋り始める。もはや死体ではない、のだが、やはり死体なのであった。森の中で、ハンクがかつて一目惚れをしたメアリー・エリザベス・ウィンステッド演じるサラとの出会いを再現し、メニーもまたサラに惚れ込むことで故郷へ帰るためのエネルギーとし、彼らが出会ったバスの様相を再現するにあたり、もはや現実と空想との区別がつかなくなってきたのだが、熊との死闘の末に故郷にたどり着き、さらにはサラの家の庭に出る。サラは結婚しており子供もいた。子供に見つかった彼らは当然保護され、メニーは収容されようとする。ただ、ハンクはメニーとの間に培った友情を失ってしまうことを肯んぜず、メニーを連れて逃げてしまう。皆がハンクの奇行を痛々しく見守る中、見つかってからうんともすんとも言わなくなったメニーの体がまたしてもガスによって動き始める。そして、メニーはまたしても沖合に行ってしまうのだった。

 奇妙な作品であり、途中のバスシーンあたりから自分はいったい何を見ているのか、どういう結末に陥るのか分からなくなってきてしまったのだが、もちろん最後まで何がなんだか分からないままで終わった。面白かったかと言えばそれなりに面白いのだが、いや、しかし感想に困ることは事実である。