Outside

Something is better than nothing.

前進運動

spring forward

 前へ前へ進もうと考えることそれ自体にたぶん意味はなく、結果的に表出されたものにこそ意味があるのだろうと思いつつ、しかしながらそれを作り出すためにはその気持ちが必要ではある、と考えるわけなのだが、例えば小説を書くときに、一体どこまで続けられるのだろうと、暗中を模索するような気持ちで、今自分がいる地点がどこなのか分からず、果たしてその先に何があるのだろうか分からない、不安である、けれどもこれを進めていかなければならないといった感覚を、ようやく掴めたような気がする。

 短編小説を書くとき、そこにある言葉の数々はどこか、書きつつあるその手と私自身の語彙と一致していなかったか。書くことに関しての体力に限界が訪れて、長くても100枚程度しか今まで書けなかったのだけれども、その中で例えば70枚辺りを過ぎたときから、もう息も絶え絶えといった状態になってしまい、書けなくなってしまう。自分の書くモチベーションが尻すぼみになっていき、どうやって終わらせるか、ということに気持ちが終始してしまう。もちろん構成上の必要というものはあるのだけれども、それはどこか撤退戦のようなものだった。

 先日当初は300枚、最終的には280枚の小説を書いて、いろいろと発見したことがある。

 書いている途中で息苦しさを感じながらも、どこか前へ前へ進もうというモチベーションがずっとあった。資料を読んでいるときも、考えているのは小説のことだった。私は卒論を書いていた当時を思い出した。あのときも、大体は50枚前後でまとめるようにと言われていたのだが、当時の私は100枚以上書きたくて仕方なかった。結果的には70枚くらいで終わってしまったのだが、おそらくゼミの中では一番分量が多かったのではないか、と思っている。そのときに私が感じていたのは、ただただ前へ進もうということだけで、そこでは表面的な論理展開からは離れて、ひたすらに作品世界を詳らかにしていきたいという思いだけがあった。

 書いているときに資料以外で念頭にあったのは佐藤亜紀の『小説のストラテジー』と保坂和志の『小説の自由』だった。この二つの本は、作者としての私とは別の、書きつつある手の味方として、小説を前へ前へと進ませてくれる本だ。厳密に言えば、この二つの本の背後に『小説のタクティクス』(佐藤)と『小説の誕生』(保坂、以下同)、『小説、世界の奏でる音楽』があるのだが、いずれもこの書き手の前進を手助けしてくれる本であることに変わりはない。

 もちろん一生懸命に書いた今回の小説も、「だって屑じゃん」と一蹴されてしまう可能性は充分にあり、そしてそれこそが小説やその他の芸術の面白さではあるのだけれども、たとえそうであっても私はこの小説を書いたことによって、どこか別の場所に運ばれていったのだという感覚があって、それが非常に喜ばしい。「だって屑じゃん」と言われる可能性のある地平に行けたのではないか、と思えることが。

 たかだか280枚程度で、という気持ちもあるのだけれども、これまで改行を増やすなど小細工を弄した上で最長でも180枚程度しか書けなかった書き手としては、この枚数を書けたということが純粋に嬉しいのであり、同時にこの感覚というものはちょっと記録に残しておきたいという思いがあった。

『スクリーム2』(1997年)

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  ウェス・クレイヴンの『スクリーム2』を観る。

 前作の続きで、コートニー・コックス演じるゲイブの書いた本を元にして、前作の映画化が果たされ、その上映中にスクリームのお面を被った人物による犯行が行われる。ネーブ・キャンベル演じるシドニーは前作の記憶も未だある中で、彼氏を作ってキャンパスライフを楽しんでいるのだが、そこにまたしても電話がかかってくる。かくして、前作のコピーキャットによる犯行が続いていくのだが、デヴィッド・アークエット演じる保安官のデューイが保護に駆けつけてくれたり、そのままゲイルと懇ろになったりするので、とにかく状況は悲惨さを極めつつ、しかし犯人が明らかにされるのだった。

 やる気のない感想になってしまったが、実際の作品はけっこうよくできていて、ホラー作品における続編をメタフィクションにしつつ、第一作の状況を再現しつつも微妙にずらしてもいる。意外な犯人というのもまた脱構築されているので、第一作同様に犯人が明らかになると途端に興味を失ってしまうのが悪い癖といえば癖だが、しかし作りがうまいからなのだろうか、最後まで観てしまったのも事実なのだった。

 

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  前作の感想。

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『スクリーム』(1996年)

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  ウェス・クレイヴンの『スクリーム』を観る。

 冒頭、ドリュー・バリモア演じるケイシーは恋人と一緒に映画を観ようと一人で準備をしているが、そこへ一本の電話がかかってくる。間違い電話を装って、ゲームをしようという問いかけから始まったその電話は次第にケイシーを恐怖に陥れる。さらには恋人が捕まり、殺害もされてしまうということなので、さらに混乱したところでお面を被った男が彼女を殺害するのだった。その同級生であるネーブ・キャンベル演じるシドニーは一年前に母親をレイプされた上で殺されてしまっており、そのことがトラウマとなって恋人とうまく次のステージへ進めないでいるのだったが、彼女もまたこの犯人に狙われてしまうことになり、そのことがきっかけげ野心家のキャスターに追われたりするので、彼女を殴り倒し、恋人が怪しい挙動をするので捕まってしまい、葛藤もするのだが誤解も解け、友人宅で休校になったことを受けてパーティーをする。そこで大量殺人が発生する。そして実は犯人は二人おり、片方は恋人であった。かくして事件は幕を下ろすのだった。

 基本的にはふざけているようでそれなりに真面目に作られている作品で、既存のホラー映画に対するメタフィクションということになっているのだが、作中の恋人じゃない方の犯人の片割れが、まるで頭が狂っている役を演じるクエンティン・タランティーノみたいで、彼を観てずっと爆笑していた。

 後半に行くにつれて、正直なところあまり好みではなくなってきているのだけれども、一定のクオリティを保つことには成功している。

 

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