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『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年)

 ヨン・サンホの『新感染半島 ファイナル・ステージ』を観る。

 カン・ドンウォン演じるジョンソクは、人々をゾンビ化させる未曾有のパンデミックが起こった韓国において、姉家族とともに車で移動していたが、そこで助けを求める家族に遭遇する。イ・ジョンヒョン演じるミンジョンは娘だけでも、というが、助ける余裕のなかった彼は、その家族を見捨てて移送する船まで行く。だが、そこでもパンデミックが発生し、姉とその子を失う。韓国人は難民化し、ジョンソクは中国において下層民として生活していたが、韓国においてドルや金が放置されており、それを回収するミッションに参加しないかと誘われる。キム・ドゥユン演じる義兄チョルミンとともに四人のメンバーで参加し、無事にドルが積まれたトラックに辿り着くものの、そこに631部隊という部隊に襲撃され、散り散りになってしまう。ジョンソクはイ・レ演じるジュニとイ・イェオン演じるユジンに助けられるが、その超絶的な運転テクニックに車内で頭をぶつけて気絶してしまう。他方で、チョルミンはキム・ミンジェ演じるファン軍曹に捕まる。彼は631部隊の実力者で、大して実戦もしないのにク・ギョファン演じるソ大尉がのさばっているのに苛立ちを感じている。ファン軍曹は物資の調達時に見つけた民間人を生捕りにして、彼らをコロシアムに投入し、ゾンビから逃げ惑わせて競わせる遊びに興じていた。チョルミンはそこに放り込まれることになる。ジョンソクは目を覚まし、あのときに見捨てたミンジョンと再会する。彼女たちに脱出することに決め、衛星電話を手に入れるために631部隊の基地に潜り込む。ソ大尉はチョルミンの持っていた衛星電話に気づき、外部と連絡を取る。トラックの荷台を港に運べば、国外に脱出できると気づいた彼は、部下に命じてファン軍曹の気を引き、脱出することを計画する。ジョンソクたちは基地に潜入し、チョルミンを救出するために奮闘し、トラックを奪取することに成功するものの、ソ大尉に見つかり戦いになる。チョルミンを助けるための戦いの中で、彼は命を失ってしまう。港に向かって逃げるものの、ファン軍曹たちが追いかけてきて、ゾンビを巻き込んだカーレースになるが、ジュニのドライビングテクニックとジョンソクの機転のお陰で無事に港に辿り着く。安心したのも束の間、ソ大尉が車に突っ込んできて、トラックを奪取する。ソ大尉は港で船に乗り込むが、そこでマフィアたちに逆に殺されてしまう。命を失う寸前に、彼はトラックを動かしてゾンビを船に乗り込ませる。船が運行不能になり、諦めかけた一向だったが、国連のヘリがやってくる。脚を撃たれたミンジョンは、子供たちをジョンソクに託す。ヘリまで辿り着くが、ジュニは母を諦めることができない。ジョンソクは再び彼女の元に戻り、そして彼女も生きる意欲を取り戻し、脱出するのだった。

 基本的にはゾンビものに対し、大きくは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)をインスパイアしている。影響関係はともかくとして、この映画は大傑作に仕上がっており、とんでもないクオリティとなっている。冒頭からカーチェイスがとんでもないことになっており、ここにゾンビの影響をまぶすことで、非常に新鮮な映像となっている。光と音に反応するという(本作での)ゾンビの特徴を充分に活かし、車のライトや銃撃、あるいは照明弾(これは631部隊側)を効果的に使用し、見応えのある映像を提示することに成功している。

 若干、ドラマに関係する部分(特にジョンソクのトラウマ)はかったるい印象もあったが、ある程度の緩急をつけてくれていると思えば許容できる範囲だろう。

 韓国が完全にゾンビランド化し、国外脱出した国民が難民化するところの描き方も面白いし、国内に残されたドルという観点も面白い。状況をしっかり吟味し、そのためのシミュレーションがなされている。

 また、悪夢的な監獄での戦いも、あまりの未来のなさと背番号としてペイントされた数字、そしてそれを背中に直に描かれているという状況、あるいは戦利品としての袋ラーメンといった描き方のリアリティがよく、ちょっと凄いことになっている。

 前作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)も凄い映画だったが、その続編もまた前作とは異なる方向で、凄い映画になっている。はっきり言って、このレベルの映画を続きもので観られることなんてそうそうない。あまりに幸せなことだ。

【前作の感想はこちら】

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