Outside

Something is better than nothing.

『レッド・ノーティス』(2021年)

 ローソン・マーシャル・サーバーの『レッド・ノーティス』を観る。Netflix映画。

 ドウェイン・ジョンソン演じるFBI捜査官ジョン・ハートリーは、リトゥ・アルヤ演じるインターポール捜査官ウルヴァシ・ダスと協力し、クレオパトラの卵と呼ばれる秘法をライアン・レイノルズ演じるノーラン・ブースから守ることにする。無事にブースを捕まえることができたものの、卵の移送中にガル・ガドット演じるビショップという泥棒に盗まれてしまい、さらにはハートリーが盗んだのではないかと嫌疑をかけられ、ブースともども監獄に送られることになる。二人はビショップから協力しないかとオファーを受けるものの、彼女の企みを頓挫させるため、全部で3つあり、そしてそのうち1つは世界中でもブースしか場所を知らないとされる卵を守ることにする。クリス・ディアマントポロス演じるソット・ボーチェという武器商人の館に二つ目の卵があるため、監獄を脱出し潜入するものの、ビショップとボーチェはすでに共謀しており、捕まってしまう。そして、拷問にかけられた末にブースはエジプトに第三の卵があることを告げてしまう。だが、ブースは嘘を言っていた。実際は南米のアルゼンチンにそれはあり、ナチスがそこに移送していたのだった。彼の父親の時計がキーとなって、二人は無事に第三の卵を見つけ出すものの、そこにビショップが現れる。しかし、ダスも現れ三つ巴の争いになり、やむなく三人は協力してダスから逃げることにする。車で逃走した末に滝壺に落ちていったブースは、ハートリーが死んだと思って卵そっちのけで探し回るのだったが、彼は生きていた。友情を確認したのもつかの間、ビショップが現れ、最後の戦いが始まるかと思いきや、実はビショップとハートリーはパートナーで、二人合わせてビショップとして活動していたのだった。一杯食わされたブースは、ダスに一度は捕まるものの、何度目かの脱出を成功させ、二人でしっぽりと楽しんでいるところに現れ、最終的には三人でチームを組むことになる。

 基本的には不真面目な風を装っている映画で、常にライアン・レイノルズがふざけ散らしているのが面白く、ドウェイン・ジョンソンの前でヴィン・ディーゼルのネタを話すところとかはちょっと笑った。

 大味であることは疑いないのだが、ガル・ガドットが美しい。非常に美しく、ソット・ボーチェの館で踊る姿は非常に印象に残った。

 ライアン・レイノルズは軽薄さを演じて軽妙な印象ではあるものの、『6アンダーグラウンド』でも思ったのだが、そこまで役者として好みではない。この要因は端的に「顔」が好みでないからだ、というところにあると思う。

 一方でドウェイン・ジョンソンはというと、感心したのは同じくボーチェの館の場面だった。そこは仮面舞踏会ということで仮面をつけているのだが、どこからどう見たってドウェイン・ジョンソンの肉体でしかなく、その鍛え抜かれた筋肉は、おそらく一時のシルベスター・スタローンだったり、アーノルド・シュワルツネッガーだったりのそれに近いような気がしている。もしかすると、それ以上なのかもしれない。彼は「彼」でしかないというところに、俳優というよりもスター性を感じてしまう。

 世界各地を飛び回ることになるのだが、ほとんと地理的な必然性はなく、せいぜいエジプトと南米くらいなものだろうと思う。特に後者はナチスが関係しているためにそうなっていることと、僻地といった感を醸し出せるところでアルゼンチンなのだろう。ほとんど題材に興味がないためなのか作劇上の都合なのか、ナチスの蒐集した美術品にいかなる敬意も払われることなく、銃撃が起こり、爆撃が起こり、ベンツが走り抜けるというところにその必然性の欠如が現れているのかもしれない。

 それを言うならば、警備員たちがライアン・レイノルズのアクションの結果として非常に痛い目に遭っている冒頭の美術館で、もちろん泥棒であるのだから善人ではないにしても、「格差」のようなものがもはや隠すつもりもなくそこにあるのではないか、とちょっと嫌な気分になったことは申し添えておきたい(鉄骨が最後に崩れる必要があったのか、作劇上は怪我人はいなさそうだったが、明らかに逃げる時間がなかったのではないか)。

 誰に対しても百点満点で六十点前後は確実に取れるような映画なのだが、取ることのできなかった四十点の方に大事な点が詰まっているのかもしれない。