Outside

Something is better than nothing.

『或る夜の出来事』(1934年)

或る夜の出来事(字幕版)

或る夜の出来事(字幕版)

  • クラーク・ゲイブル
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 フランク・キャプラの『或る夜の出来事』を観る。

 銀行家の礼状であるクローデット・コルベール演じるエリーは、ロスコー・カーンズ演じるシェプリーとの結婚を望むものの、ウォルター・コノリー演じる父アンドリュースに反対されて、断食を敢行している。彼女たちはヨットの上にいるが、反抗のためにそこから飛び降りて行方を眩ます。彼女はシェプリーに会うためにニューヨークに向かうこととし、長距離バスに乗り込む。そこへ居合わせたのは、上司と喧嘩したばかりの新聞屋クラーク・ゲーブル演じるピーター・ウォーンであった。彼らは最初、バスの座席を巡っていざこざが起きるが、大雨の影響で川が流され、やむなく宿で泊まることになってしまう。金を持っていなかったことに加え、休憩所で荷物を奪われてしまった彼女のために、新婚夫婦と偽って二人は同じ宿に泊まることになる。ピーターは女性の貞淑を守るために、「ジェリコの壁」と呼んだ、ロープと毛布でできた即席の壁をもって紳士として振る舞う。アンドリュースは娘の行方を捜すために巨額の賞金をかけるものだから、新聞でそれを知った者がピーターと共謀しようとするので、仕方なくバスを降りてヒッチハイクでニューヨークを目指すことにするものの、ヒッチハイクで捕まえた男がヒッチハイク泥棒でピーターの荷物を盗まれそうになる。が、彼は撃退して車も手に入れた。そこからニューヨークを目指すのは容易になったが、彼に恋してしまったエリーはあと三時間のところで小休憩のために宿泊することにする。彼も彼でエリーの気持ちに気づいたため、求婚のため無一文ではと思い詰め、ニューヨークに一足先に戻って上司と仲直りし、自身とエリーの記事を元手に大金を借りて、元の宿に戻ることにする。しかし、その間に宿の女将さんは彼らが無線宿泊客だと断定し、エリーの眠る部屋にやってくる。彼女はピーターに捨てられたと勘違いし、アンドリュースに連絡を取り、シェプリーとの結婚式を執り行うことに決める。気持ちが未だ揺れるエリーに、元からシェプリーのことを快く思っていなかったアンドリュースは娘の本心を聞き出していくと、ピーター・ウォールという名前に行き着く。アンドリュースはピーターから金銭を要求する手紙を受け取っていた。実際にピーターに会ったアンドリュースは、彼が賞金目当ての男ではなく、必要経費分(39ドル60セント)しか受け取らない彼の気概を気に入り、結婚式当日に花嫁に逃亡用の車を用意してやる。バージンロードで父親とを組みながらそれを告げられたエリーは、自分の本心に従うためピーターに会いに向かう。こうして二人は結ばれ、ピーターはアンドリュースに小さなモーテルで新婚初夜を迎える電報を打つ。そこには「ジェリコの壁」が破れつつあることを告げていた。アンドリュースはすぐにでも壊すべきだと告げ、二人はめでだくくっつくのであった。

 いわゆる「スクリューボール・コメディ」の元祖という作品であるらしい。キャプラの演出が冴え、最序盤から状況の整理と台詞回しが非常に巧みで、観ていて飽きなかった。ロードムービーでもあるわけなのだが、自然と二人が結びつくところが気に入った次第である。

 シェプリーの嫌なやつっぷりが、飛行機で式場に到着するところに現れているところに感心した。それなりに感情移入していたためなのか、ヘリコプターのローターのように回転するプロペラにさえ嫌みな感じを覚えてくる。

 ヒロインのエリーの無邪気な感じがよく、大雨の後、シャワーを浴びにモーテルの外に出て行く一連のシークエンスで、いちいち人が振り返ったり、あるいは女性用シャワー室の前で新入りに対し悪態をつく女性陣に対し、彼女はシャワーを浴びた後にお喋りに興じていたと楽しそうに述べるところが、描写こそされていないものの、彼女の無邪気さを表しているところなのではないか、とも思う。あの異様さ、異質な感じをいとも軽やかに飛び越えていける、といった。

 とにかく、こういった映画が当たり前のようにあるということ自体が喜ばしいことのように思う。