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『1917 命をかけた伝令』(2019年)

1917 命をかけた伝令 (字幕版)

1917 命をかけた伝令 (字幕版)

  • 発売日: 2020/05/20
  • メディア: Prime Video
 

 サム・メンデスの『1917』を観る。

 ジョージ・マッケイ演じるウィリアム・スコフィールドとディーン=チャールズ・チャップマン演じるトム・ブレイクは第一次大戦の只中にいた。西部戦線におけるドイツ軍は後退を行っていたが、コリン・ファース演じるエリンモア将軍は航空写真に基づく情報からこれは意図的なものだと看破し、リチャード・マッセン演じるジョセフ・ブレイク中尉の弟であるトムに、ベネディクト・カンバーバッチ演じるマッケンジー大佐あてへの伝令を指示する。

 基本的にはウィルとトムがとんでもない目に遭いながら、戦線を駆け上がっていき伝令を果たす、というもので、それ以上でもそれ以下でもない映画になっているのだが、この映画の戦略性が徹底されており、かなり見応えのある映画になっている。

 例えばウィルとトムが最初、自分たちのいる戦線から抜けて、ドイツ軍が撤退したと思しき前線の泥濘を抜けて駆けていく場面では、泥に足を取られ、そして死すらも絡め取られている状態が、彼らの視点を通して描かれている。そしてその視点もまた、カメラが彼らの顔を正面から映すように撮られているため、まず彼らの現前する風景が「背後」にあって、その後、カメラが回っていき、彼らの目の当たりにしている光景を私たちも追体験することになる。

 その画面の「狭さ」(彼らの表情)と、その裏腹にある「広大さ」(戦場)が、長回しを思わせるワンカットのように撮影された技術的な意図と繋がっていき、感動に包まれていく。

 だから最後に駆け抜けることになる戦場は、ウィルを映し続けることで、逆説的にではあるが、銃撃や砲撃による混乱を、その混乱による情報の不正確さを表しているのだろう、と思えてくるのである。

 おそらくこの映画は技術的な意図が明確に画面に描かれることになる状況と極めて密接に繋がることになっており、その同着が思いのほか心地よい(それは戦場の悲惨さとは別の、映像そのものの心地よさとして)。