Outside

Something is better than nothing.

『ザ・サークル』(2017年)

ザ・サークル(字幕版)

ザ・サークル(字幕版)

  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: Prime Video
 

 ジェームズ・ポンソルトの『ザ・サークル』を観る。

 エマ・ワトソン演じるメイ・ホランドは、カレン・ギラン演じるアニー・アラートンの仲介で巨大IT企業サークルに就職することができた。彼女には難病の父親がおり、その治療法をカバーする健康保険が必要でもあった。初めは異質な文化に戸惑う彼女だったが、トム・ハンクス演じるCEOイーモン・ベイリーが開発したSeeChangeという、どこにでも設置することができる小型カメラデバイスをきっかけとして、少しずつ状況が変わり始める。あらゆるプライバシーを透明化しようとする彼女の行動に、ジョン・ボイエガ演じるタイ・ラフィートはかつてTrueYou(YouTube)を開発したものの、サークルが意図しないものに変えてしまい、SeeChangeもまた同様の危険性があると指摘するも、メイはまだその危険性の本質を理解できなかった。やがて、彼女は透明化の一環としてSeeChangeをほぼすべての瞬間において着用することとなり、そのことがきっかけで幼なじみのエラー・コルトレーン演じるマーサーの作った鹿のシャンデリアが動物愛護的な嫌悪感を呼び起こしバッシングされてしまうといった事態が生じる。また、両親に治療を提供することができたものの、四六時中を彼女と共に公開することとなった両親も、彼らの最もプライベートな部分についても(故意ではないもののタイミングが悪く)公開されてしまったことから、関係が悪化していく。また、アニーとの関係も、メイのポジションが向上していくとともに悪化していく。そして、ある日彼女はサークルの新コンセプトの発表会の社内プレゼンターとして抜擢され、プレゼンを行うのだが、その中で失った関係性や社会から隔絶していた人々を繋ぎ直すSoulSearchというサービスを発表するが、そこで彼女と疎遠になっていたマーサーが選ばれ、サポーターたちの暴走もあり、彼は撮影から逃れるため車を走らせていたが、誤って橋から墜落し、死亡してしまう。落ち込む彼女と、アニーとの関係修復とタイのアドバイスもあり、ふたたび社内プレゼンテーションの壇上に立つ彼女は、CEOに透明化を突きつけるのだった。

 悪夢的で、『ソーシャル・ネットワーク』という悪趣味な傑作とは対照的に、この映画はただそこから傑作を抜いただけの映画となっているのだが、それは何故だろうと考えたときに、果たして私の感じたものが生理的なものだけだったのか、ということを考える。

 私はこの映画を否定するのだが、その否定の根拠はと言えば、ほとんどが生理的なものなのかもしれない。若い人を、道徳的に振る舞いつつもその実は破滅の道に陥れようとしており、その様を作り手はしてやったりといった表情をしながら撮影している、といった。

 俳優たちに非はないと思うのだが、これはエマ・ワトソンがこのトラブルの当事者だからなのだろうか。妙に観ていてむかむかとしてきて、それは消えることなく、ひとまずの最後の段に到った後もつっかえが残るものだった。

 おおむねディストピア的なものを描きたいような欲望があったのかもしれないのだが、タイトル通り、サークルの内側に閉じており、彼女たちの途中で話し始める政治的な状況との接続はあまりに説得力がなくて、観ていて辛くなった。

 趣味が悪いと言えば、どう考えても作中の両親のシーンであろうとは思うのだが、SeeChangeというガジェットのもたらすプライバシーとの激突は、年老いた彼らだけの問題ではなく、もっと基本的に想定しうるものであるはずなのに、その部分がすっぽり抜け落ちているのが、余計にたちが悪い。