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11月の振り返り(Stairway 11)

Yesterday

 いろいろと新しいことや、以前から温めていたが着手できなかったことが眼前に迫ることになってきたものの、かといってそういった物事について、どうすることもできないまま、ただ濁流に呑み込まれるようにして今に至るというような案配であるのだが、そういった抽象性に果たして意味があるのか。とはいえ、ニュースは常に現前し続ける。

 今月でまず触れるべきは米中間選挙であり、結果としては上院は与党が制し、下院は民主党が8年ぶりに過半数を奪回したという状態になった。今ちょうど『民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道』という本を読んでいるのだが、その中でもトランプ現象については政党(パーティ)のチェック機能が失われたことによって、既成の権力関係、利害関係から外れたところで、過激に民主主義的な人物が台頭してしまったのだ、といったことが書かれている。状況報告的には町山智浩が継続的にリポートしてきたオバマ時代のアメリカにおけるバーサーズ(ティーパーティー)の動きといったものの結果が現在に続いているというところなのだろうし、その後の話についてはまだ本をすべて読んでいないので何とも言えないのだが、この下院を民主党が取ったというのは大きいと思う。

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 そして、その大きさというものについて、一体いかなる戦略、あるいは戦術があったのかというのは今後の分析が待たれるところではあるものの、一つ気になった記事としてはモーリー・ロバートソンの記事であろう。

headlines.yahoo.co.jp

 この中でロバートソンはジジェクの論説を援用しつつ「ジジェクは、リベラル陣営がトランプら右派政治家の言動ばかりに目を奪われるのは『バカげている』と喝破(かっぱ)します。極右の再興はあくまでもグローバリズムの暴走、格差の拡大による"二次的な症状"である」(引用は上記記事より)と述べている。これはイギリスの状況とパラレルとまではいかないにしても、類似しているのではないかと思うのは、ブレイディみかこの各種の報告によるものだからなのかもしれない。

 本邦においてもグローバリズムの暴走の結果としての極右の再興はあるにはあるのだが、それは例えば下記のような本が出版していることからも察することができよう。

bucchinews.com

 日本の右翼の系譜については、安田浩一「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)』に詳しいが、今や極右は連綿と受け継がれてきたある種の矜恃を失っているのは、あくまで二次的な症状としての発症だからなのかもしれない。

 国内で大きなトピックスといえば、ルノー・日産・三菱の各自動車会社の会長を兼務するカルロス・ゴーンが逮捕されたことだろう。

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 また、個人的に気になった記事を五月雨式に記載する。

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 これはAIが話題になった際に指摘されていたことだと思われるが、AIによる判断については機械学習のその内容についてまでの吟味が果たしてされるのかという懸念はあったはずで、うろ覚えだが、過去のデータを学習させる場合、あるバイアスが入ったものが大量に流し込まれた結果として、AIは(当然)そのバイアスを引き継いでしまう。端的には差別性が強いデータを学習させてしまうことで、その差別性をAIが引き継いでしまう可能性があった(例えば下記記事参照)。差別性のみならず、おそらくマーケティングについてもかなり保守的なものになってしまうだろう。そういった意味でいえば、このような法整備は必要になるだろう。

wired.jp

 継続的に追いかけているキャッシュレスについての話題だが、LINEについてまた新たな展開が伺える。

japanese.engadget.com

 LINEについては、すでにLINE PAYやスマート投資、LINE ほけんといった商品からも察することができるように、「銀行」というものへの親和性をどんどん高めていっている。事実上、LINE PAYの残高は預金であるし(たしか疑似預金とか言うらしい)、決済サービスは法人向けの規模はないけれども、リテールには適している。そういった意味で言えば、現行、仮にLINEが倒産したところで一切の保証がなさそうな疑似預金よりも、銀行化してしまった方がいいのではないかとも思われる。

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 上述した『民主主義の死に方』の中で、独裁者の傾向があるポイントが解説されていたが、もちろん報道の自由はあったよね、という程度。もちろん本邦の安倍首相も当てはまっているのであった。

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 既存のATM事業については、どの銀行も何かしらの見直しをかける必要があるとは思うのだけれども、例えばゆうちょ銀行やセブン銀行ほどの規模があるなら独自規格の必要性はスケールメリットとしてあるのかもしれないけれども、それ以外の銀行はあまり必要とは感じられない気がする。

toricago.hatenablog.com

 TikTokの文字が日経新聞に躍るとき、それを読むいわゆる「おっさん」系の人たちというのは、そのサービスの内実について、どの程度の理解を示せるのかという疑問を、そうは言いつつも「おっさん」化しつつある私も思うのだけれど――という枕詞を頭にしつつも、この記事は非常に示唆的だった。TikTokの子どもに対する(悪)影響というものについては、私はまったく想像の範疇になかったので、かなり啓発された。ハッシュタグの「広告で有名になりたい」について、最初は「ふーん」くらいで思っていたけれども、最近はいろいろと考えさせられてしまう。

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 有名な映画なので誰でも知っているけれども、クレヨンしんちゃんの中に、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)という映画がありこれは高度成長期のベルエポックな日々を取り戻そうとする悪の集団が出てきて、その頃の青春時代を過ごした人々の心を操っていく話なのだけれども、「イエスタデイ・ワンスモア」というのが悪の集団らしい(今Wikipediaで調べた)。

 21世紀の我々の未来はいつだってイエスタデイ・ワンスモアなのかもしれない。

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joek.hateblo.jp