Outside

Something is better than nothing.

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年)

 スティーブン・スピルバーグの『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を観る。

 メリル・ストリープ演じるキャサリン・グラハムは、ワシントン・ポストの社主として、政界に顔が利きつつ、新聞を発行する立場にあるのだが、父、夫の跡を継ぎ、役員連中からは軽んじられているものの、その責任を全うしようとしている。トム・ハンクス演じるベン・ブラッドリーはワシントン・ポストの編集主幹として辣腕を振るっていたが、ある日、ニューヨーク・タイムズベトナム戦争下における政府の隠蔽について機密文書を元に事実を赤裸々にすっぱ抜くと、ニクソン大統領下の政府は発行の差し止めを図り、報道の自由に真っ向から対立する。キャサリンは社主としてこの騒動を前に株式の公開を控えており、非常事態にはその公開が一週間停止するという特別条項に危機感を抱きつつ、事態を前にする。ベンは状況に対し苛立ちを感じつつ、ボブ・オデンカーク演じるベン・バグディキアンを初めとするチームに機密文書のリーク元を当たらせる。タイムズ紙は差し止めを食らってしまったが、その間にバグディキアンは流出元を探り当てることに成功するものの、政府の方針に真っ向から対立する決断を行うかどうか、キャサリンは悩む。だが、ベンの説得により、彼女は報道の自由表現の自由を守るために戦うことを決断し、その決断を支持するように他紙もまたポスト紙が報じた事実に追随する。ついに、政府に対して強烈なカウンターを行うことができたのだった。ニクソンは怒り狂いながらも、状況をさらに支配しようと目論むのだったが、警備員が民主党の事務所が入ったウォーターゲートビルに入った何者かに気づくシーンが仄めかされ、ニクソンの失墜を予感させるのだった。

 トランプ政権下のアメリカ、というのはおそらくかなり息苦しいのだろうと思わなくもない――というところで、すでに冷静な目でもって映画を観ていない気もするのだが、しかし一斉に地方局がCNNを攻撃するというニュースもあったことだし、そういう意味で言えばこの映画はタイムリーな確かな感触を伝える、非常に立派な映画だと思う。

 翻って本邦でも、森友学園問題というものを初めとして、さまざまな問題を孕んでおり、この映画で語られる非常に理想的な自由の追求とその擁護について、胸が熱くならざるを得なかった。

 ここに出てくるメリル・ストリープ演じるキャサリンは、真っ当な人物として、責任をもって決断を下す、という役柄を演じている。トム・ハンクス演じるベンが、後に気づくように、その責任を果たすにあたって、どういうものをベットしなければならなかったのか、その重さについては本人だけしか知り得ないような重さであり、他の者は察することしかできない、孤独なものなのであろう。

 やや唐突に出てくるウォーターゲート事件の端緒については、あまり詳しくない人間にとっては戸惑うしかなかったのだが、それなりに理解できなくもない。その後に起こった出来事を考えれば、ニクソンの電話音声の描かれ方については、そういうことなのかという一定の理解もできる。とはいえ、分かりづらいよね、とは思うけれども。

 役者たちは非常に素晴らしい演技をしており、ここで名前を挙げた三人については特に素晴らしい演技を見せてくれたと思う。