Outside

Something is better than nothing.

『アメリ』(2001年)

アメリ [Blu-ray]

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 ジャン=ピエール・ジュネの『アメリ』を観る。

 オドレイ・トトゥ演じるアメリは冷淡な父親ラファエルと神経質な母アマンディーヌと子供の頃暮らしていたが、幼少期よりラファエルの誤診で心臓に病があると思い込まれてしまい、アマンディーヌによる家庭教育の下で育ったため、友人と遊ぶことがなかった。やがてアマンディーヌが事故で亡くなると、ラファエルは自分の世界から一歩も出なくなり、またアメリ自身も空想の世界に孤独を癒やすようになっていったが、大人になってアパートで一人暮らしをするようになり、カフェで働き始めると、ある日、証明写真のボックスの下で捨てられた写真を集める男マチュー・カソヴィッツ演じるニノ・カンカンポワに出会う。ニノに対し、自分の恋心を素直に打ち明けることができないアメリは、同時期に自分以外の誰かを幸せにしようと隠れていろいろな手助けなどを行っていくうちに、かなり遠回しな方法でニノと会おうと画策する。どうしてもニノの前に出ることができないアメリを、アパートの住人で骨が弱いレイモンたちが後押しして、ようやく彼と付き合うことに至るのだった。

 かなり好みの映画だった。ある意味で言えば「ある瞬間」に出くわすための映画と言えるのでないか、というのがこの映画を観終えた後の私の感想で、人生の中でこの「ある瞬間」というのはいくらでも落ちているのだけれども、自覚的に出くわせることはまずない。

 ところがアメリはそれを他人に出くわせるためにあれこれ画策するうちに、生来のコミュニケーション不足が祟ってか、自分の「ある瞬間」に対して、どうしようもない袋小路に陥ってしまう。それは、ニノも同じかもしれないが、ニノの方がまだしも行動的なのは、職業柄なのだろうか。

 ああ、こういうこともあったよなあ、という自分でもまるで覚えがない記憶を思い出したりもする映画であり、この「ある瞬間」は例えば自分が運命の人だと思う人物に出会った、実際何のことはない邂逅であるけれども、後々に回想すると持続して運命的な出会い方――とその共にいた時間――であるわけで、そういう意味でこの映画は素晴らしい。