Outside

Something is better than nothing.

『1922』(2017年)

 ザック・ヒルディッチの『1922』を観る。原作は未読。Netflixの映画。

 アメリカの農作地帯に住む農夫ウィルフレッドは、妻のアルレットと息子のヘンリーと共にトウモロコシを作って暮らしていたが、暮らし向きは芳しくない。元々ウィルフレッドの土地は妻のアルレットの父から相続したものであり、土地の登記上はアルレットのものだった。この田舎の土地を売り払って都会で暮らしたいと願うアルレットだったが、夫のウィルフレッドは自分の暮らしを維持したいと拒絶している。しかしアルレットは次第に銀行などに土地売却の話を進めるにつれて、ウィルフレッドは危機感を覚え、ヘンリーと共謀して母親を殺すことにしたのだった。実の母親を殺すことを躊躇うヘンリーに、ヘンリーが思いを寄せている少女シャノンの話を出すことで、うまく殺害へと誘導したウィルフレッドは、土地を売却することにしたと嘘偽りを言い、気をよくしたアルレットが酒に酔った夜、二人で切れ味の悪い刃物でアルレットを殺害し、井戸の中に放り込む。しかし、その日からウィルフレッドは鼠の被害に悩まされるようになった。またシャノンとヘンリーの中はどんどん進んでいき、シャノンが妊娠してしまう状態になりもする。シャノンの父親で親友だと思っていた男から、娘を修道院に入れるためのお金を催促されたウィルフレッドは、仕方なく金策に走るが、その間に思い詰めたヘンリーたちが駆け落ちをしてしまう。そして彼らは各地で強盗を繰り返し、その場しのぎの金策に走るのだった。結局、家族を失ったウィルフレッドは度重なるアルエットの幻覚に悩まされつつ、鼠があちこちに出没するようにもなる。そして妻の残した金銭を探しているある日、鼠に手を噛まれて、そこから傷が化膿したウィルフレッドは冬の農園の最中、死んだはずのアルレットが息子たちの不幸な死を語り出す。そう、各地で強盗を繰り返した若いカップルは、ある日、逃げている途中で銃撃され、シャノンは致命傷を負ってしまい、その後死んでしまう。ヘンリーは彼女を看取った後、自殺するのだった。ウィルフレッドはヘンリーを看取り、時代は移り変わっていき、結局は妻を殺してまで固執した土地を売り払い、自分自身は労働者になるのだったが、しかし鼠たちの幻覚には悩まされ続けるのだった。

 雰囲気の作り方はうまく、一定のスタイルを感じさせる作品だった。1922年から始まり、1930年で終わるらしいこの映画は、もちろん背後に世界恐慌が控えているのだし、作中で直接のきっかけになる「土地」の扱い自体も、より高度な資本主義化に至る過程における変化と密接に関わっているのだろう。

 だからこの映画はホラーとしてよくできているのみならず、当時のアメリカにおける価値観の変容についても描かれているといっても過言ではないのだろうし、そういう意味で言えば、このトウモロコシと農場の閉塞感がまた、妙にしっくり来てしまうような、そんな気がするのだった。

 割と悪くない作品だと思われる。

[2018年1月29日、登場人物の名前が間違っていたので修正。]