Outside

Something is better than nothing.

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』(2016年)

 エドワード・ズウィックの『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』を観る。

 トム・クルーズ演じるジャック・リーチャーはコビー・スマルダーズ演じるスーザン・ターナー少佐が反逆罪で捕まったことをきっかけに事態に介入していき、どうやらイラクで武器輸送の際に、敵対勢力への横流し等の不正行為があったことまでは分かるのだが、そこにリーチャーの「娘」としてダニカ・ヤロシュ演じるサマンサが登場して事態がややこしくなり、リーチャーとサマンサを殺すために奮闘する殺し屋なのか軍の人なのか分からない人が出てくる。で、不正の方はと言えば、実はアヘン輸出問題だったらしいので、追い詰めたリーチャーたちが将軍が逮捕して事件は一件略着かと言えば、例の殺し屋が娘を執拗に狙うのでリーチャーが懲らしめる。最終的にサマンサは「娘」ではないことが判明し、リーチャーはまた旅に出る。

 前作で一定のスタイルが構築されており、それはもう得も言われぬ高揚感を得ることができていたのとは対照的に、本作ではかなりシンプルにさまざまな要素が削ぎ落とされた結果、前作で良かった部分さえも削ぎ落とされてしまっている。

 正直に言えば最後まで観るのがだいぶ苦痛であり、エドワード・ズウィックの生真面目な演出が功を奏さなかったのではないかという嫌いもあるのだが、トム・クルーズの役者としての旬もかなり微妙になってきたのではないかというところに、この物語や演出諸々の悪い点が重なり、微妙な作品となっている。

 内容はきちんと詰め込まれているのであって、要素要素として見ればそれなりなのだろうけれども、観念的に言えば有機的に結合していない。この内容ならば娘の存在は不要だっただろうし、むしろ少佐の存在もあってもなくても構わないのではないかとさえ思うのだけれども――そしてその「シンプルさ」の方が面白そうじゃないか?――このシリーズはまだ続くのだろうか、と考えると一抹の不安を感じなくもない。

「M:I」シリーズは一作ごとに監督を変える、ということで、作品ごとのクオリティやスタイルのばらつきは凄いことになっているものの、4辺りからかなり落ち着いて傑作になっているのだが、果たして現状のトム・クルーズの俳優としての力で、今後のシリーズが継続されるのかどうか、というところは疑問。

 唯一良かったのは、銃撃シーンで、あれだけはかなり迫力があって燃えた。