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『鬼談百景』(2016年)

鬼談百景

鬼談百景

 

  オムニバス映画の『鬼談百景』を観る。監督はそれぞれ中村義洋、白石晃士、安里麻里、岩澤宏樹、大畑創、内藤瑛亮。原作は未読。

「追い越し」「密閉」「影男」「尾けてくる」「どこの子」「空きチャンネル」「一緒に見ていた」「赤い女」「どろぼう」「続きをしよう」の十編の短編を『残穢 -住んではいけない部屋-』(2016年)における竹内結子演じる小松由美子のナレーションで進めていく。

 話としては短いながらも印象に残るものが多く、それぞれ雰囲気が出ていて楽しめたといえば楽しめたのだが、さすがに監督が六人もいるとクオリティにばらつきがあり、いまいちなものも多かった。『残穢』ののらりくらりとした朴訥とした語りで進められていく、あの淡々とした語り口調が怖さを助長させるのだとしたら、主な語り手が竹内結子によらないもの(画面内のアクションが主体のもの)については、怖さが半減してしまうのではないか、ということと、『残穢』を起点に話を構成するならば、「形のない怨念」のようなものをベースにしてくれた方がよかったのではないか、と思わなくもない。話は夏目漱石の「夢十夜」における「こんな夢を見た」といった案配の「こんな手紙が来た」という始まりがあり、統一感があったものの、『残穢』の起点がいまいちなのではないかと感じられた。

 また、これは作品上の難点ではなく、単に私の好みに属するものなのだが、『残穢』が怪異を解き明かすためのストーリーを持ち、そこにさまざまな人物のインタビューや映画上の出来事など多声性のようなものを被せてくるのに対して、この映画は手紙を起点とし、語り手は実直にそれを「読む」以上、広がりを持たない。

 なかなかホラーを作るのも難しいものだと思わされる作品だった。