Outside

Something is better than nothing.

『ジャドヴィル包囲戦』(2016年)

 リッチー・スマイスの『ジャドヴィル包囲戦』を観る。Netflixで視聴可能。

 ジェイミー・ドーナン演じる中隊長は戦闘経験のないアイルランド人部隊を率いて、鉱物資源を盾に冷戦のパワーバランスをうまく利用してコンゴから独立したカダンガ州に、平和維持軍として入る。しかしながら鉱山会社を経由してフランスのド・ゴールに私警備隊を送るように依頼して三千人ものフランスの傭兵部隊がやってくる。国連の政治的存在感や出世を目論む個々人の思惑等が入り乱れて、とにかく駐屯地にフランス傭兵襲撃するので救援を求めるものの、にべもなく断られて、和平交渉も部下の勝手な民間人襲撃によってうまくいかない。弾薬が限られている中、戦闘経験のないアイルランド人部隊は善戦するものの、次第に数に押し切られてしまう。だが中隊長の機転を活かして反撃し、やがてフランス人の隊長にも認められるくらいにまで善戦するものの、結局味方からの支援が期待できず、やむなく投降する。国に戻った彼らを待ち受けていたのは、善戦し、戦死者を誰も出さなかった卓越した軍事行動に対する名誉ではなく、政治的状況によって、面倒にも生き残った彼らに対する決まりの悪い表情だった。

 状況が明確に整理された上で、私利私欲とスケールの大きいがゆえの「犠牲は仕方ない」的な組織の建前によって、圧殺されかかった人々の話といえばおそらく分かりやすい。科学の進歩には犠牲がつきものです、という言葉を思い浮かべる。

 描写にあまり無駄がなく、戦闘シーンにおける無駄がないので観ていて飽きないのである。ジェイミー・ドーナンは頭でっかちなまま戦場に赴き、やがては冷静な指示を飛ばす中隊長を好演しているし、その他の戦闘経験のない兵隊たちはやや身体が兵士にしては貧弱なイメージがあって、それもそれで「らしさ」を醸し出していると思う。

 グロテスクさを重視していないというところも映像的にかなり好ましく、中隊長が帰還後に奥さんと抱き合うシーンは観ていて非常に心安まるものではあった。