Outside

Something is better than nothing.

『Seventh Code』(2014年)

  黒沢清の『Seventh Code』を観る。

 前田敦子演じる秋子が、いちど会った鈴木亮平演じる松永に会うために、日本からロシアのウラジオストクにまで追いかけていくが、にべもなくあしらわれてしまうので途方に暮れて、けれども追いかけたところ、松永は何やら怪しい男たちと怪しい取引をしているため怪しいと思った秋子は怪しい男たちに怪しく近づこうとするのだが、怪しい男たちにこの女は怪しい女だと思われて、怪しい女は放り出せとばかりにどこかに放り捨てられてしまって荷物もなくなってしまう。山本浩司演じる斉藤のいるレストランに赴いた秋子はそこで無銭飲食をして、いつか松永に再会できるとそこで働き始め、同僚の中国人の女性は夢を求めてどこかに行き、斉藤と一緒に松永の車を見かけて追いかけるがマフィアの密売品庫になっているとのことで、いつの間にかそこを調べに行った斉藤は殺されている。で、秋子は侵入し、なぜか途中から格闘技をバリバリできるようになっている秋子はスタンガンを片手に襲いかかる松永を撃退し、電球っぽいものを持ち出して政治家に売りさばいて、その後、車の荷台に載って移動中に爆発が起き、終わる。

 まあ、少なくともまじめに作られた作品ではない、ということはたしかで、それは主演の前田敦子の同名の楽曲に対して作られたから、ということもあるのだろうとは思うのだが、そういう外側の部分をさておいても、女優としての前田敦子は『クロユリ団地』(2013年)に登場していたときのようにまったく魅力的ではないし、後々に暗殺者っぽく変貌する秋子のキャラクターに対して裏設定がどうとか言う前に行き当たりばったりな印象を『回路』(2001年)と同様に思わざるを得ないわけであり、これはいったい何なのだろうか、と思う作品だった。

 しかしながら、このどうしようもない作品の中で、相変わらず謎の役者根性を見せ続けてくれる鈴木亮平に対しては、一定の評価をしなければならないと思うのはたしかで、私はこの鈴木亮平という役者をあの傑作『TOKYO TRIBE』(2014年)を観て以来、物凄く気に入ってしまったのだった。

 ああいう存在感のある役者は、今の日本にはそうそういないのではないか。

 だからこそ、こういうどうしようもない作品に出て才能を浪費する前に、もっともっといい作品に出会ってくれればとは思うのだが、鈴木亮平の役者魂がそうさせるのか、あるいは事務所的な都合といった現世的な理由のためなのか、万一の可能性を考慮する限りはもしかすると鈴木亮平にとっては来たるべき傑作に至るための芸の肥やしなのかもしれないこの映画は、しかしとにかく私の視聴体験としてはまったくの時間の無駄だったのであり、同時にそうとでも想像しなければこの一時間を無駄にしてしまったという後悔をうまく消化できそうにもないということは事実なのである。