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あっさりとした下ネタのおかしみ

 

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 逃げるは恥だが役に立つ

 TBSで毎週火曜22時から放送されているドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、『逃げ恥』)は、主人公の森山みくりを演じる新垣結衣ことガッキーのエンディングにおける可愛いダンスもあって人気だが、テーマは契約結婚というものだ。家事代行業として働きに来る女性を妻として契約する、というものだが、実際家事代行という観点のみだと十分に需給がマッチしそうな設定である。

 先日、飲み会を行った際に2人の年下の後輩女子に『逃げ恥』の話題を振ったところ、そもそも1人は主演の星野源の大ファンだったということもあり、もちろん観ていた。

「『逃げ恥』面白いよね~」

 と話していると、

「ガッキーが来てくれるなら、絶対契約します」

 そっちかよ。

 と一瞬思ったけれども、たしかにそうなのである。「プロの独身」津崎として出演している星野源は、35年間女性経験がない童貞らしく、そのためか女性の扱いに慣れていない印象を受ける。

 過去に星野源が主演していた映画『箱入り息子の恋』(2013年)も、あまり覚えていないのだが似たような設定で、星野源という人はそういう役どころが似合う。というよりも、眼鏡を外すとその辺にいそう、というところが絶妙にハマる。


[新ドラマ]新垣結衣×星野源の「恋ダンス」 先行映像 10/11スタート 火曜ドラマ 『逃げるは恥だが役に立つ』【TBS】

下ネタのエグさ

 星野源のラジオで、大泉洋がゲストで来ていた回を聴いていると、けっこう下ネタも喋っていた。聞いていてあまり嫌みではなかった。

 女の下ネタはエグい、というステレオタイプがある。私はどちらかと言えば男の下ネタの方がエグいと感じられる。昔は大丈夫なのだったが、今は女性とそういう話をする方がけっこう気楽で、そういうものの延長線上に星野源のあっさりとした下ネタはある。

 もちろん星野源はアーティストで、ライブでは女性がキャーキャー言っているらしいのでアイドル的でもあり、そうであるがゆえのイメージ戦略的なものなのだろうけれども。

 さて、このエグさはどこから来るのだろうと思ったときに、私が思い出したのは春画展で見た春画だった。そこには江戸時代への憧憬(幻想)が込められていることを自覚しつつ、春画に描かれた性はとてもあっけらかんとしていたように思える。エグさは、そのあっけらかんとしたものから離れたところにあると思えるのだ。

誰も傷つかないこと

 性風俗について主に扱った猥談を聞いていると、そこにあるのは男根的発想としか呼べないものを基準にした話で、たしかにバリエーションはあるにはあるのだが、けっこう単調である。少なくとも私はあまり面白さを感じられない。

 私の後輩は性に関わる失敗談を多く持っていて、決してモテるというわけではないと本人は言いつつ、なんでこう面白いのだろうという体験を話すので、私はいつも楽しく拝聴しているのだが、そのときに感じるのは、あっけらかんとしたおかしみであり、笑いの種にしかならないようなものだ。

 そういった話は、どことなく春画的だと感じられる。もちろん春画のようにあっけらかんとしたものには至らないにしても、「その構図はありえない」という春画へのおかしみを持った視線が、「そのセックスはありえない」みたいな形で猥談へとシフトしている。

 おそらくそこにあるのは、誰も傷つかないということなのではないかと思う。もちろんひどいフラれ方をしたとか、ヤリ逃げされたといった案件はどちらか一方は被害を被っていることになるのだが、猥談として話される限りは誰も傷つかない。

 非対称性が、おそらくおかしみから距離を遠ざけてしまうのだ。

 男根的発想の根底にあるのはナルシシズムの強化であり、あっけらかんとしたその猥談にあるのは話としてのおかしみだけだ。あっさりとした下ネタのおかしみは、おそらくはそういうものなのだろう。

 

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