換気
ずっと同じところにいると、息苦しくなる。私たちの呼吸することに変わりはない。しかし、密閉された容器の中の、空気の絶対量は変わらない。
だからそこで呼吸し続けると、いつしか空気を失うことになる。呼吸のたびに、吸い込む空気の量が減っていき、やがて窒息が訪れる。
換気。空気の入れ換え。これは必要だろう。適宜の換気による空気の刷新。清新な空気が、私たちの呼吸を軽やかにし、空気は比喩的な意味の通り空気となる。
簡単なようでいて、その換気は難しい。密閉されているその密室は、私たちの思念が作り出した偽りの空間であるにもかかわらず、いつしかその空想が実体化し始める。壁が、目の前に生まれる。
ただドアを開けて、外に出ればよいはずなのに、そのドアノブの想像上の冷たさと重さにためらい、やがてためらい続けることを正当化し始める。
さあ 窓をあけ僕は手を差しのべて
さあ 手を伸ばし君はただ掴めばいい
Dragon Ash「陽はまたのぼりくりかえす」(1998年)
たぶん、もっと簡単なことなのだ。思っているよりも、もっともっと。