Outside

Something is better than nothing.

『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(2018年)

 ローアル・ユートハウグの『トゥームレイダー ファースト・ミッション』を観る。

 アリシア・ヴィキャンデル演じるララ・クラフトはドミニク・ウェスト演じる父リチャードの遺した莫大な財産を相続せず、邪馬台国卑弥呼を探し求めて行方を消した父の生存を信じ続け、大企業の社長になる権利があるにもかかわらず、その日暮らしのような生活を行っている。そんな中、彼女はクリスティン・スコット・トーマス演じるアナの熱心な説得に応じ、父の死を法的に認め、相続しようかと思った矢先に、弁護士により遺産を渡され、その中にあった謎を解いていくうちに、父が最後に向かった卑弥呼の島を目指す。ダニエル・ウー演じるルー・レンの父親とともにリチャードは旅立ったものと思われ、香港でルーに船を借りたララは謎めいた島に漂着する。そこにはウォルトン・ゴギンズ演じるマサイアス・ヴォーゲルが、卑弥呼の力を発掘せんがために独裁的な体制を敷いていた。ヴォーゲルはララが持参した父リチャードの研究を奪い、彼をかつて殺したと述べる。悲嘆に暮れる間もなく、ララは奴隷労働を強いられるが、ルーが機転を利かせ、彼女を逃がす。海岸をあてどなく彷徨うララだったが、そこに怪しげな男の影が彷徨うので追いかけると、あれほど焦がれた父親がそこにはあった。父親は生きていたのだ。束の間の再会を喜ぶ父娘だったが、父親はヴォーゲル卑弥呼の墓を暴くことを世界の危機と捉え、それを阻止しようと行動する。ララは島から逃げ出すために行動を開始するが、父親を盾に取られたララは好奇心に駆られつつも謎を解いていく。陵墓の中には侵入者を逃さないような死の罠が張り巡らされており、知恵と勇気を絞ってララは最奥部へと向かっていく。そして卑弥呼の棺がそこにはあった。ヴォーゲルの仲間が動かすためにミイラに触れると、触れた者は端からどんどん腐ってしまう。そう、卑弥呼が死の使いのように恐れられたのは、魔術を使うからではなく、伝染病の菌の保有者だったからだ。ヴォーゲルは謎めいた組織「トリニティ」のために、その一部を持ち帰ろうとする。ララはそれを追いかけ、感染してしまったリチャードはダイナマイトで卑弥呼の遺体がまた利用されないように消滅を目論む。ヴォーゲルとの死闘の末、ララはヴォーゲルを退け、世界を救ったのだった。

 原作ゲームは遠い昔、たぶんプレイステーションの時代にやったことがあるのだがクリアできなかった覚えがある。リブート前の作品は一番初めのものだけ観たのだが、あまり記憶に残っていない。予告編からしてたいそう不安視していた作品だったが、観終えてまず思ったのが「凄い!」というものだった。良作である。

 この映画は「女が殴る・殴られる映画だ」とひとまず言うことができるのだろう、と観終えた私は思った。たしかに上述の事態が引き起こされる映画はいくつかあるし、もしかすると最近映画を観ることを怠けていた身からすれば、すでにあるよ、というものなのかもしれない。

 そのため、有効ではない言い方かもしれないのだが、ある種の暴力表現が女性にも訪れた映画だった、と私は思った。冒頭から、ララ・クロフトは格闘技をやって、女性相手ではあるものの、薄手のグローブでばんばん殴り合って、組んずほぐれつの大乱闘を行い、その後は街中でのバイクレース、島に着いてからは初めての殺人に際しての壮絶な格闘、ヴォーゲルとの最後の戦い……と、殴られるし殴り返す。

 そしてその格闘の音が物凄く重たいのだ。心地の良いパンチの音、というよりは、骨まで抉りかねないようなゴリゴリといった音がする。もちろんヒロインたるララ・クロフトを演じたアリシア・ヴィキャンデルはほとんどまともに傷ついていないのだけれども、そのギャップが妙に怖かった。

 かような女性による/女性への暴力表現について、いくつか思いを馳せるような真剣な眼差しを介在させてしまったことはあったにせよ、映画はおおむね好ましい進行をし、予告編でよくジャンプしているなあというシーンは実際に映画の中では見事な繋ぎによってもたらされた一瞬であることが分かり、監督は初めて観る方ではあるのだが非常に今後が期待できる、と思われた。割と音楽の使い方まで好みで、そもそもアリシア・ヴィキャンデルの撮影の仕方からして好ましい。加えて悪役ヴォーゲルを演じたウォルトン・ゴギンズが非常に良い演技をしていて、(私はあまり好きな俳優ではないのだが)ジャック・ニコルソンを思わせた。このヴォーゲルの悪役っぷりというのは、個人的には大好物すぎて、素晴らしい。

 そんなこんなで大傑作と呼ぶにはおそらく『トゥーム・レイダー』の素材上の難しさがあったのではないか、と思われるのだが、それでも良作であることは間違いない作品だった。

 また、質屋の主人にニック・フロストが出ている。