Outside

Something is better than nothing.

『ガールフレンドデイ』(2017年)

Amber Tamblyn - DSC_0082

 マイケル・ポール・スティーブンソンの『ガールフレンドデイ』を観る。Netflixで視聴可能。

 ボブ・オデンカーク演じるレイはグリーティングカードなどの洒落たメッセージを書くライターだったが、ここ数年はパッとせず、そのためにクビを宣告されてしまう。しかし、州内で新たに祝日「ガールフレンドデイ」を定めることとなり、そのことがきっかけでカード用のメッセージを書くように元上司から依頼される。だがカード業界を二分するがごとき、兄弟のそれぞれの会社の対立に彼は巻き込まれていき、暴力的な目にも遭う。レイは妻と別れており、そのことが大いに関係してカードが書けないでいるのだが、アンバー・タンブリン演じるジルと出会い、彼女に惹かれていくことで少しずつ立ち直っていくのであった。

 例によって『ブレイキング・バッド』や『ベター・コール・ソウル』でソウルを演じたボブ・オデンカークが熱演をしている映画で、正直なところ、悪くない出来だった。微妙にカード業界の対立が分かりづらかったところもあるのだが、人間関係すらも複雑で、別れた妻には同じ業界人の夫がおり、かつて飼っていた猫を共有しているために会いに行かなければならない。ジルについても、薬物中毒の夫との間に子供がおり、しかしそれは父親の養子に入っており、娘は母親を伯母だと思い込んでいる。たぶんこの辺りの設定は、設定上の混乱というよりも、アメリカにおける家族上の前提の一つとでもいっていい有様なのではなかろうか、と個人的には思うのであり、そのために上映時間の短さの割に、こういう要素を詰め込むという選択肢を選んだのだと思われる。

 とはいえ、この映画で何が一番よかったかと問われれば、一も二もなく、ジルを演じたアンバー・タンブリンであり、それはまるで『アメイジングスパイダーマン』で唯一輝きを持っていたエマ・ストーンに匹敵するミューズっぷりを発揮していた。

 このアンバー・タンブリンの美しさとは、他者を圧倒するものではなく、私個人を圧倒するものであるのだけれども、ネットで調べてみると詩人ですらあるということで、ミューズだと直感した私の第六感は冴えに冴えている。まさかこういう女優が画面の中に活き活きと映し出されるなど思ってもみなかったわけであり、この新鮮な驚きはボブ・オデンカークの熱演を曇らせてしまうほどのものであった。

 残念なことに映っている時間や、その美しさを堪能する時間は短かったのではあるが、その美しさたるや、初めて目にするにもかかわらず、胸が高鳴るのであった。