Outside

Something is better than nothing.

『オーディション』(1999年)

オーディション

オーディション

 

  三池崇史の『オーディション』を観る。

 石橋凌演じる青山は映画のプロデューサーをしているが、数年前に妻を亡くしており、以来沢木哲演じる息子と二人で暮らしている。息子となった高校生からそろそろ再婚してみては、と言われるので、友人プロデューサーの國村隼演じる吉川から映画のオーディションにかこつけて、嫁を探そうと言われる。実際にオーディションを始めると、椎名英姫演じる山崎麻美に惹かれるものがあった青山は、彼女との逢瀬を続けるうちに、奇妙な思いを抱きながらも親密な仲になっていく。旅行に行ったときに彼女と関係を持つようになるのだが、その後彼女は行方をくらましてしまう。彼女を探す青山だったが、自宅に戻って酒を飲んだところ、そこに毒が混入されており、身動きが取れなくなってしまう。麻美が現れて、キリキリキリキリと言いながら彼に虐待を加えていく中で彼は性的悪夢を何度か見て、現実に戻るのだが、足が落とされ、顔に何本もの針が刺さっている。息子が戻ってきて、麻美は催涙スプレーを武器に息子も殺そうとするのだが、階段の上まで追い詰めたところで息子のジタバタする足を食らってしまい、階段から落ちて麻美は死ぬ。

 話としてはどうしようもないのだが、ミソジニー全開のこの映画がけっこう面白い。おそらく意図的にしているのだろうが(と思いたいというのはあるのだが)、青山と吉川のオーディション場面ではセクハラとしか思えない質問をかなりしているし、彼らの女性への視点というものも相当に歪んでいる。おそらくその原因はプロデューサーという職業に回収されていくのだろうが、青山は自分の会社の事務員との関係を一時的に持っていたりするわけで、性的に歪んでいるといえば歪んでいる男の性的妄想をすべてぶつけようとしたら女性に返り討ちに遭った映画というものではあるのだが、その返り討ちもまたミソジニーの範疇にあるといっても過言ではない。

 麻美のキャラクターは相当に混乱している。子供時代に性的なものを含む虐待に遭っているのだろうと思うのだが、それがあのゴア趣味に走るというところが興味深い。彼女に関わる男たちのイカレっぷりもまた面白く、周囲の麻美に対する性的妄想がどんどん膨らんだ結果、彼女自身をも歪めてしまったというわけである(バレエをやっていたという麻美の属性がそのまんま性的なものに結びついていく短絡が面白い)。三池崇史だから、というところにすべて回収されそうな映画でもあった。