考える軌跡
保坂和志の小説ではないエッセイをメインとした本を読むときに、ポーンとボールを無造作に投げたかのような言葉に出会うことが多々あり、それは良い面と悪い面とがあることは重々承知であるし、「保坂和志」的なものについての検討というものはしなければならないとは思うのだが、それでも先日読み終えた『考える練習』(大和書房、2013年)は少しどうかなと思う発言が多かったように記憶する。
保坂和志が若い編集者に向かってさまざまなことを話すわけなのだが、『小説の自由』などから始まる小説論の方が「考える」という意味ではものすごく考えられているものであるという印象を受ける。
全部が全部というわけではないにしろ、語られたその言葉にあまり説得性や思考の軌跡のようなものを感じ取ることができなかった。
個人的には『遠い触覚』(2015年)にかなり刺激を受けたのだがなあ。
(2016年11月30日タイトル変更及びカテゴリ変更)