雪が降った。この寒い中、人生初の転職活動を行った。取り立てて必要に迫られているわけでもないのだが、いい機会なのでやってみようという軽い気持ちで転職サイトに登録し、Web履歴書の項目をちまちまと埋めていくとオファーがかかった。ありきたりなメッセージで、おそらくWeb履歴書の埋めた項目数に従って自動的に配信されているのだろうが、気が向いたので面接に向かった。
久しぶりに面接は非常に緊張したのだが、会社説明を聞いているうちに自分のニーズとあまり合致していないことが分かったので、ヴァレリーの「方法的制覇」の話をした。
前日に、高山宏と中沢新一の雑談『インヴェンション』を読んでいたからなのかもしれない。妙に知的な会話を行いたかったのだが、もちろん就職面接においてそういったものを期待しているわけでもなく、自分の一方的な意見を開陳しただけで終わった。
インヴェンション (La science sauvage de poche)
- 作者: 高山宏,中沢新一
- 出版社/メーカー: 明治大学出版会
- 発売日: 2014/03
- メディア: 単行本
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思えば自分にはスキルもなく、経験も同様である以上、就職市場においての自分の価値というものはないに等しい。自分はアセットだと割り切るほどのサバイブ感もないので、ゆるく、楽に金を稼げればいいし、給料が安くてもやりがいが、といった精神性の高低も特に興味はない。
「絶対に落ちたよな、これ」
と帰り道、受付に入館証を返しながら、思わず笑みがこぼれてしまうのを覚えていた。どう考えても、落ちる。誰が面接の場でヴァレリーの話をするんだ。
けれども、就職活動中に面接で落ちまくった身とすれば、別にその会社にしがみつきたいわけではないのだという余裕が、その面接における本来の会社優位の立場を逆転させ、いわゆる「お祈り」をこちらから行えるのだ、という自分の優位性が――非常に器が小さい人間だと自分でも思うのだが――嬉しいのだった。