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Outside

Something is better than nothing.

嘘つきの重たさ

社会

 

shadows

米大統領選

 アメリカの大統領選が日本時間で言えば本日(2016年11月8日)の夜から行われるのだが、それに伴ってさまざまなニュースや記事が出ている。

 ヒラリーとトランプにはそれぞれ問題として挙げられていることは多いが、個人的にはヒラリーの勝利に終わるように感じられる。ヒラリーについては以下の記事を読んでいて、けっこうなるほどと思った。

www.huffingtonpost.jp

 膨大なニュースや記事をいちいち追いかけていくことは疲れることなので、さすがに目を通す記事の本数は少なくなったのだが、昨日この記事を読んだ。

wired.jp

二つの要点

 ここではドナルド・トランプの『トランプ自伝』を共同執筆したトニー・シュウォルツが登場し、トランプについての「真実の姿」について語っていくことになるのだが、この長い記事の中の要点は少なく、主に以下の二点にまとめられるのではないか。

    1. 「自己顕示欲のかたまり」*1
    2. 「嘘つき」*2

  これを読んでいて暗澹たる気持ちになっていくのだが、別に今さら驚きはしない。この記事があってもなくても、トランプという人間はそういうものなのではないかという予想はあるわけであり、ただ単に気持ちが沈むだけだった。

嘘つき

 数ヶ月前に職場で「嘘つき」という言葉を聞いた――というより、言われたことがある。その言葉は特定個人に対するものというより、職場全体に対して放たれた言葉だった。

 内容の是非は置くにしても、この「嘘つき」という言葉は意外と重たい言葉であると久しぶりに聞いて感じた。そのため、かなり印象に残っている。

 この「嘘つき」という言葉を最後に私が自発的に使ったのは、たぶん小学生かそこらの頃で、なぜ使ったかといえば文字通り相手が「嘘つき」だったからで、批難するために使っている。

 だから、この「嘘つき」という言葉にはどこか子供の熱のこもった口の利き方を思い返させる何かがあり、有り体にいえば幼稚にも感じられるのだが、けれども少なくとも五十歳を過ぎている上司がその言葉を使ったとき、我々は妙にドキッとしたのだった。

 この一聴すると幼稚にしか聞こえない「嘘つき」は、しかしながら職場においてしばらくの間、何か大切なものを奪われたかのような影を落とした。

「あの『嘘つき』ってないよね」

「あそこまで言わなくてもいいよなあ」

「なかなか聞かないよな、『嘘つき』って」

「けっこう傷つくわ、あれ」

 それは子供時代の郷愁を伴ったあの幼い頃の熱情が、五十をとうに過ぎた上司の口ぶりによって水を差されてしまったという汚辱ゆえなのかどうか、私には判断がつかない。

 けれども、この端的な「嘘つき」という言葉によってもたらされた影は、思いのほか我々の心に影響を与えたのだった。

ライアー

 最後に、特に結論めいたものは記さずに、先ほどの記事のある言葉について述べて終わりにしたい。

 先ほどの記事を読んでいくと、私が要点としてまとめたようにトランプは「嘘つき」なのだが、例えばシュウォルツは「嘘つき」という言葉を本文中に一度しか使っていない。それもトランプの発言として。

「トランプがとる態度は、『おまえはクズだ、嘘つきのクソ野郎だ』と相手を罵倒するか、『おまえは最高だ』とおだてるか、この2つしかありません。そして、わたしに対しては『最高』のほうだったということです。トランプは大物扱いされ、表紙に顔が載ることが何より嬉しいようでした」

(前掲記事より引用、太字は引用者)

  私は英語があまりできないので、嘘つきの単純な英訳としての「liar」というものがどういうニュアンスのものなのかどうか、そして「嘘つき」=「liar」以外の訳語があるのかどうか知らないという留保はありつつも、原文の記事でも「liar」は一度しか使われていない(文章は先ほど引用した箇所とおおむね同様の箇所)。

“I was shocked,” Schwartz told me. “Trump didn’t fit any model of human being I’d ever met. He was obsessed with publicity, and he didn’t care what you wrote.” He went on, “Trump only takes two positions. Either you’re a scummy loser, liar, whatever, or you’re the greatest. I became the greatest. He wanted to be seen as a tough guy, and he loved being on the cover.” Schwartz wrote him back, saying, “Of all the people I’ve written about over the years, you are certainly the best sport.”

(原文記事「Donald Trump’s Ghostwriter Tells All - The New Yorker」より引用、太字および斜体は引用者)

 これもやはりトランプの発言なのだった。

 

【関連記事】

  トランプが言った「信じがたい憎悪」という言葉について云々した記事。

joek.hateblo.jp

*1:少し長いが引用「トランプは完全に『注目を浴びたい』という強迫観念にとらわれていて、大統領選に出馬したのもそのためだとシュウォルツは言う。『40年間、トランプはひたすらその欲望を満足させるためだけに生きてきたのです。何十年もマスコミの注目の的でいたトランプにとって、これ以上の注目を浴びるには大統領への立候補くらいしかなかったのです。もし“世界の皇帝”というものでもあったなら、トランプはまちがいなく立候補するでしょう』」。

*2:以下、引用「『トランプは口を開けば嘘をつくのです』とシュウォルツは言う。『わたしの知る誰よりも、彼は、いついかなるときでも自分が言うことはすべて本当であるか、あるいは少なくとも本当であるべきだと信じてしまう能力をもっているのです』」。