Outside

Something is better than nothing.

部屋の中心的なテーマ

 四方の壁、六方を限定されたその空間は、ほとんどの人にとって馴染み深い場所であるに違いない。すべてとは言い難いが、おおむね人は部屋の中で生活を行っている。もちろん四方の壁に囲まれたというのは、正方形ないし長方形の部屋を想定しているからで、デザインによっては別種の空間が広がっていることも考えられる。
 世界の果てが個々の部屋の中にあるとき、旅に出ることは私たちの部屋に向けて出発することに他ならない、と前回の『壁』の引用ではあった。だから、というわけではないが、私はこの部屋の存在に、どこか謎めいた拡がりを覚えるのだった。
 家にいるとき、人は部屋の中にいるわけである。壁に囲まれた、部屋という空間に。例えばタブレットスマートフォン、携帯電話も、見ようによっては部屋の壁の一部を外部に持ち出している、と考えられなくはない。そして地平線に向けて人は言葉をぶつけ、思いを馳せ、旅をする。マナー云々と叫ばれても、思いのほか外部での壁の持ち出しが心地よいのも、おそらくは部屋の安心感が持続しているからに違いない。
 私たちの世界の果ては、部屋の壁の延長によってさらなる拡散をしてしまっていると考えられなくもない。そのとき、まさしく部屋とは、遍在する世界の果てのイメージを担う、適切なテーマであると考えられるのであった。