Outside

Something is better than nothing.

新しい掃除機

 前回に引き続き掃除機について、ということになるのだが、私はそれからしばらくの間、掃除機を使わなかった。例の大学生のときに買った掃除機を思って、ということではなく、単に使うタイミングがなかったのだった。

 古くなった黄色い掃除機とは対照的に、新しい掃除機は赤い。黄色い掃除機はややくすんでいて、年月を感じさせるものであったが、新しい掃除機の赤さはメタリックな色合いをしていて、新品らしい新品なのである。新しい何かが生活の中に入り込んでくると、少しワクワクするものだけれども、この掃除機は実に革命的だったのだ。

 ある休みの朝、私は妻と共に掃除を始めた。特に「今日こそは!」という気もなく、何気ない日常的な掃除の一コマだった。充電スタンドから掃除機を引っ張り上げ、床に置いてスイッチを入れる。

 鳴り響く吸引音。掃除機を動かし始めると変化に気づいた。

「こ、こいつは……!」

 そう、赤色の掃除機は実に使いやすかったのである。当たり前といえば当り前であろうが、私にとっては十把一絡げに掃除機の機能性はダイソンを除きほとんど変わらないのではないかというイメージを、なぜだか持っていたのである。

 しかし現実は異なっていた。掃除機には多様性があるのだった。使ってみて、それはすぐに分かった。実家にあったあの掃除機とも、少し前まで使っていた黄色い掃除機とも、これは違った。

 まず、ヘッドがよく動くのである。そしてその先についているLEDのライトが、暗い場所にあるゴミを暴き出す。そして黄色い掃除機の、ありえないくらいに低下した吸引力からは想像だにしなかった、吸い込む力。これこそが掃除機なのだ、と力強く、この赤い掃除機は自らの存在を主張していた。

 掃除の効率は驚くべきほど上がった。これまではあの重たい機体を持って、家中を動かねばならなかった。狭いところではその大きさが仇となり、あちこちにぶつけてストレスが溜まり、さらにコードが行動範囲を決めてしまう。新しい掃除機は違った。まず機体の重さ自体は多少軽くなった程度であるが、コードレスであるために行動範囲に限定はない。そして二通りの使い方を可能にする、本体から取り外して使用するハンディタイプも備え付けてあり、狭いところでも問題なく使える。

 まさに革命だった。私は「凄いよこれ凄い!」と掃除中の妻にはしゃぎながら言うのだった(そして「知ってる」とすでに新しい掃除機を使って掃除をしていた妻はにべもなく言うのだったが)。